第4話 金ヅルの私



 こんなに突然、実の親から邪険に扱われるようになったことに、私は戸惑いを隠せなかった。

 ただでさえHSPで、百歩譲って私の悪口を言っていなかったとしても、そう思ってしまうのがHSPなのだ。生きづらいことこの上ない。


 昨年までは誕生日プレゼントもくれていて、相場も誕生日プレゼントらしく可愛らしいもので、グラスやコーヒーカップ、片手鍋など仰々しくなく使えるものだった。

 私達がうさぎを飼っているということで、うさぎの可愛いマスコットやグッズを見かけたら買って送ってくれていた。

 私も母の日や誕生日にはプレゼントを贈っていた(と思う)。


 しかし、今は関係がよくないので、それで贈り物をするなんていうのは、私も贈りにくいし、コンタクトを取らなければいけないので、そっとしておくことを選んだ。


 まずやってきたのは母の日だ。

 こんな世の中なので連絡くらいはした方がいいと判断し、主人とペットと3人で写した写真と一言メッセージを送る。


 『いいショットだね!』とだけ、返信があったが、返信があっただけマシだと思わないと私のメンタルが崩壊する。

 そこからは一言返しても、既読スルーだった。


 それから私の誕生日を迎え、今年はくれないだろうな、と予測していた通り、なにもくれなかった。


 ただメッセージは毎年、生まれた時間に送ってくる。今年もそれは欠かさなかった。

 内容は無難なメッセージだった。

 ちなみに父からも別でメッセージがきたが、父からのメッセージの方が人間味があって暖かかった。


 まあ、今の関係ならこんなものだよね……と納得しようと思っていた矢先、私の誕生月が終わる前に、なんとプレゼントの催促がきたのだ。


 ちょっと待ってくれ、なんのプレゼントだ……?


 母の日にあげなかったから、それか……?


 だったら母が誕生日に何もくれなかったのは、なかったことにするつもりなのだろうか?


 母が私に要求したプレゼントは、毎年プレゼントしているタオルだった。

 私も愛用していて、とてもいいものだったので母に買ってあげたのをきっかけに、母はそのタオルしか使わないようになる。

 消耗品なので、毛羽立ってきたら交換するのがよく、ちょうど誕生日くらいに買い足してプレゼントしてあげていた。


 母に苛立っている中、突然、

「タオルそろそろ欲しい」

というLINEが来た。


 本気で言っているのか……?


 その前に、私がコロナで職を失ったこととか、定期的に突っ込んできていた母。

「仕事あるの?」

と言われるたびに、

「ない」と答えていたので、余るほどお金があるわけでもないというのはわかっているはずだ。


 特に将来家を建てたいので、お金は余ってはいない。


 それじゃなくても、母からその質問がくると、「将来私達の面倒よろしくね」と言われているような気がして気持ちが暗くなる。


 仕事を選ぶから来ないんだ、などと私を卑下するだけしておいて、

「タオルそろそろ欲しい」

は図々しすぎやしないだろうか。


 しまいには、

「タオルはふたつくらいよろしく」

と言い放ち、そこからは既読スルーとなった。


 私は実の娘なのに、金づるだと思われているのか?

 タオルはサブスクじゃないんだぞ……?


 そのタオルというのは1600円ほどするもので、たしかにとても品物がよく、私も愛用している。

でも1年以上使い続けているのに、母はぽんぽんと新品に交換するようだ。


 それをふたつと要求されてしまったので、単純計算で3200円。

 送り先の関係で送料は1500円。


 暴利だ……。


 せめて、私の誕生日に知らせた、私の作ったLINEスタンプを買ってくれたりしてほしかった。

 たったの120円を2種類なのに、母はそれも買ってくれなかったし、話題にも触れてくれなかった。


 私の母はこのような人だが、昔はこうではなかった。

 私のことが嫌いになったので意地悪をしているのか、若年性アルツハイマーの症状なのかは、素人目ではわからない。


 弟は公務員でお金があるはずなのに、子供がいるからという理由で私の方に要求されるのだろう。

 計画を立てて子供を作ったのだろうから、そこは遠慮しないで公務員の弟にたかればいいのに、と思うのは意地悪だろうか。


 母には今までお金をいくらか使ってきた。

 禁煙の薬も4万円かけて、私の余り(ほぼ飲んでいない)をプレゼントしたのだが、飲んでもタバコを吸い続け、今も禁煙薬なんか貰わなかったような顔をして吸っている。

 娘の心配は受け入れてもらえなかった。


「趣味のものも買わせてもらえない」

というので、羊毛フェルトキットを買ってあげて、教えたけれど、使ってもらえなかった。

「時間ないんだもん」

と、やっぱり時間のせいにしていた。

 時間がないわりにゲームボーイで未だにドクターマリオをプレーする時間はあるらしい。


 だいたい、趣味のものを買わせてもらえないというのはなぜなのだろう。

 今は父も働いておらず、年金を貰って生活している中で、父は自分の趣味にたくさんお金を使っている。生活費は全て母の年金から出させられているとでもいうのだろうか。

 だったらそれはそれで、父がひどいということになるが。


 とにかく、私はこれから先もタオルの要求をされ続けるのだろう。

 言っておくがAmazonで簡単に買えるんだから自分で買うことだってできるはずだ。

 ものすごい甘えを、子供にしている。


 父は自分の分だけiPhoneをさっさと買い、母には必要ないと言って与えなかった。

 やはりiPhoneはあった方が便利なので、私が買ってあげた。

 それだけでは飽きたらなかったか……。

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