第39話 対魔王軍戦 ⑮ -Bytemarks and Bloodstains
ランゴル平原が死屍累々で埋まっていく。まだ命ある者たちはその狂乱に気が狂い、生命としての尊厳や、性別、倫理などといったものを放棄し、ひたすらに血を求める。
我が国の勝利を。という高尚な想いなど他所にして、殺さねば殺されるという本能に支配され、存分に振舞う。刃が身体に侵入する感覚に慣れ、後に高揚に代わり、立派に気が狂った兵士達が入り乱れる。
王国軍はエルフやドワーフといった種族の援護も受けつつ少しづつ魔王軍を押しつつある。しかし、魔王軍が召喚する奇妙な魔物たちの予測不能な行動にたちまち翻弄される。以下、現在難敵とみなされる魔物達を紹介する。
・フォーテト
地面に埋まるような形で生息する魔物。地表に小さい触手を伸ばしており、それに感知されると地下の本体が出現し食い尽くす。体長は5メートルほどもあり、人間が狙われればひとたまりもない。
数は50対ほど召喚されている。
歩兵が囮となり本体を出現させ、飛竜隊や弓兵などにより撃退する方法が効果的である。
囮になる歩兵は、負傷により身体の自由が利かないもの、自暴自棄になっている者など、自ら志願する者が大半である。
・マドヴェイン
目玉だらけの球体のような本体に長い脚が4本生えた巨大な魔物。意思は持っておらず、ただ歩行するのみ。人を踏みつぶそうと何の感情も抱くことはない。
100対ほど召喚されている。
幾分移動速度は遅い為、魔法や弓兵などで比較的容易に対処できる。
しかし乱戦状態の戦場を悠々と闊歩するのはかなり鬱陶しく、屠れたとしても、その死骸が倒れた際に踏み潰されたりする恐れがある。
・ブラー
真白い猿のような小さな魔物。戦場にはあまり出現せず、木の上を飛び回っているが、突如尋常ではない大声を放ち、人間の鼓膜を破ってくる。
300対ほどいたが、現在は30体程まで減らされた。
戦闘序盤は発見されることもなく、ただ自生する猿程度に思われていた。徐々に正体が判明してきてからは別動隊により駆逐されている。
攻撃力は弱く、大声もブラーの鼓膜から作った耳栓で防げるようになり、対処さえしていれば問題はない。ただし、視認していればの話だが。
・オペス
格子状になった植物様の球体の中に巨大な目玉と口を備えた本体が入っている巨大生物。本体からは植物様の触手がまっすぐに伸びている。
甘い香りを放ち、獲物を誘惑し、間合いに入るや否や触手で捕まえ、地面に複数回叩きつける。それらを食すことはなく、ただ弄ぶ。そして不気味な笑い声を響かせる。
非常に残虐であるため攻略が難しい。精神を安定させる作用をもつ毒を放出するため、敵味方構わず中毒になってしまい、最終的に嬲り殺される。
なぜかヴァネロなどの薬物中毒者には作用しないため、現在は薬物中毒者ばかりを集めた部隊【L.S.D (Long Slow Distance)】により対処されている。
・フィンチ(ネームド個体)
「フィンチ、それが奴の名前か。」
グンテが顎に伝う汗を拳で拭いつつ目の前の魔物を睨みつける。
雀のような愛らしい顔に不釣り合いな、筋骨隆々の体躯。今にもはち切れんばかりに張り付いたTシャツが彼の誇示の高さを表している。
「こら!俺が食事をしてるのに邪魔するなって!マジで殺しちまうぞ!ピロピロ!」
フィンチと呼ばれた魔物は息絶えた兵士の首に舌を突き刺し、吸血する。グンテの部下がその光景に堪えられず駆けだそうとするが、グンテが制止する。
「なぜ!?」
「闇雲なだけなら死ぬぞ。テメェの命を無駄にするな。勿体ねえ。」
部下は不服に思うが、差し出されたグンテの腕に夥しいほどの血管が浮き出ていることから全てを察する。グンテの溢れんばかりの闘志がフィンチに向けられる。フィンチはそれを気にせず【食事】を継続する。
「よし!栄養補給はバッチリだ!ピロピロ!ん?次はお前か?やるか?」
「まずその気味の悪い殺気をもう少し抑えたらどうだ?」
「いいじゃないか!これが俺のやりかたなの!」
「変態雀が」
「こらー!初対面でその口の利き方は失礼でしょーがー!!」
フィンチは両手を振り上げると、中腰のような姿勢を取る。徐々に強靭な太腿に力が込められる。筋肉が隆起する。途端、尋常ではない速度で間合いを詰めてくる。
「そのままぶった斬る!」
グンテは身の丈ほどある大剣を真っすぐ向かってくるフィンチに向けて振り下ろす。フィンチは拳で受ける。グンテが一瞬たじろぐ。瞬間、下顎に強烈な衝撃が走る。フィンチの強烈なアッパーカットによりグンテは宙を舞う。
「戦いは常に拳で語り合うもの!武器に頼るからそうなるの!ピロピロ!」
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