第2話 BBQ

 ベルリ城下町郊外にあるルス公園には今日も多くの人々が憩いを目的に訪れる。草花を楽しむ者、子供と共にする時間で夢を見る者、ペットと触れ合うもの、画才を発揮する者、仲間たちとの運動に汗を流す者そして、冒険を終えた身体に冷えた瓶ビールを流し込み疲れを癒す者。


 「明日雨やな」

 「せやな」


 勇者と賢者は公園のベンチに腰掛け、空を眺める。明日の天気予報とは裏腹に、青く広大な晴天が満ちている。


 「BBQ無理そうやな」

 「あれ?明日BBQするん?」

 「するで」

 「あれ?俺呼ばれてないねんけど?」


 勇者は煙草に火を点ける。


 「呼んでないからな」

 「なんでなん!?相棒やん!呼べよ!」

 「お前BBQ嫌いやろ?」

 「そんなやつこの世界に1匹たりともおるかい」

 「虫もってことか…」

 「そこ深堀りせんでええねん」


 二人は空のビール瓶の中に吸い終えた煙草を入れる。ジュッという小さな音と共に煙が消える。

 

 「明日誰と行くん?」

 「何が?」

 「BBQ」

 「僕一人やけど?」

 「ほな呼んだらええやん!一人でBBQするやつなんてこの世界に一羽もおれへんわ」

 「ウサギもってことか…」

 「そうやけど、なんかややこしいわソレ」


 二人は空になったビール瓶を持ち上げるとゴミ箱の方まで移動し、捨てる。ベンチに戻ろうとすると数人の若者に声をかけられる。若者たちは「伝説の冒険者だ!」と口々に二人との出会いに感動する言葉を投げかける。二人は少し照れながら、話しそこそこにその場を済ませ、またベンチに腰掛ける。


 「鑑定屋のジジィからな、肉貰ってん」

 「へぇ、ええやん」


 賢者は煙草を巻きながら返答する。勇者は欠伸を一つ漏らす。


 「結構良い肉。ステーキにして食べたろうと思ってな」

 「ハッ!それで独り占めしたくて一人で行くの?子供か!ええか相棒、飯っていうのはな、気の合う仲間で食べるのが一番うまいねん!そのもろたエエ肉も、お前一人で食べたところでなんの旨味も感じられへんわ!っていうか一緒に俺も冒険しとんねんからそれぐらい誘ってくれてもええやんけ!」

 「お前、肉食われへんやんけ」

 「食えるわボケアホ!そんなやつこの世界に一本たりともおれへんわ!」

 「マグロはお前。俺今、肉の話してんのに」

 「生き物の単位に詳しいのちょっと怖いねん!」

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