6 帰還

「地球に帰るよ。俺にはやるべきことがある」

 ルデリンガが、指揮者がタクトを振るように手を動かすと、目の前の超立方体からたくさんのコードが現れた。

 宙を漂うそれらのコードは、生きているように有機的な雰囲気を醸し出していた。コードは、アスキスの体に吸い寄せられるように繋がれていった。

 一瞬目の前が真っ暗になり意識を失ったアスキス。

 気が付くと目の前にイプシムが浮かんでいた。


「おかえりなさい」

「お前、わざとあっちに転送したんじゃないだろうな」

 イプシムはアスキスの言葉を無視して、鼻歌を歌いながら上へ上へと漂って言った。

「だって、僕の言うこと全く信用しないんだもん」

 アスキスはがっくりと肩を落とした。

「まあいい。悪いのは俺のほうだ。本当の仕事に取り掛かるよ。超立方体に保存されている任者達の人格を出してくれ」

 イプシムが超立方体の中に潜ると、超立方体の側面に20インチほどの画面が幾つも現れた。画面にノイズが走り砂嵐がおさまった後、不明瞭なモザイク掛かった映像が徐々に人の顔を形作っていった。

 画面には老若男女問わず様々な顔ぶれが揃った。

「俺をここから出せ」

 画面の中の一人の男が言った。

 彫りが深い低い声の男がアスキスを見ていた。

「あ、これは、全くイメージがないと接しづらいと思って、任意で付けたイメージだから本人の容姿とは関係ないからね」

 イプシムが言葉を挟んだ。

「俺をここから出せ」

 男はもう一度言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る