4 真相
ルデリンガは、アスキスの向かい側に座り話し始めた。
「まず、イプシムはここにはいない」
アスキスはルデリンガを睨みつけた。
「イプシムに何をした」
「待て。君は早とちりが過ぎるよ。落ち着いて」
ルデリンガは両手の平を上下に動かしアスキスを宥めた。
「君は何か勘違いしているようだけど、ここは君が元々いた場所ではないよ」
「どういうことだ。では一体、ここは何処なんだ」
「ここは昔、ムーンやツキと呼ばれた場所だ。管理中央AIイプシムは、君が自殺を図った後、自我が消失する前に、人格データのバックアップを超立方体に取った。そして、通常ならそのまま新しいクローン体に、バックアップされた君の人格を移し変えるはずだったんだが、操作ミスで、人工衛星を介してこっちの超立方体に君の人格データを転送してしまったんだ。こちらの超立方体に繋がれたクローン体で君は目覚め、朦朧とした意識で、夢遊病者のように何日か彷徨っていたところを、監視モニターで私が見つけたんだ」
目を見開き、何も言えずに口をパクパク動かすアスキス。
「そ、それじゃあ。お前は俺が、地球でただ一人苦しんでいたことを知っていたのか」
ゆっくりと頷くルデリンガ。
アスキスは立ち上がるとルデリンガの胸ぐらを掴んだ。
「いい加減にしろ! 俺にあの惑星の責任をすべて押し付けやがって!! お前はあの科学者達の末裔か。俺に仲間をよこせ。助っ人をよこせ!!」
ルデリンガはアスキスの手を振りほどくと、深い溜息をついた。
「そうか。消されているんだね。君の精神の均衡を保つために、イプシムが何か細工をしたらしい。仲間はいた。でも、君が全員殺したんだ」
「そんな馬鹿な。嘘だ」
そう言うとアスキスは頭を抱え、その場にうずくまってしまった。
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