3 遭遇
暗い。何も見えない。
まだ…生きている…のか…俺は…
頭にモヤがかかったように、上手く思考が働かない。
俺は、どうして、何を。ここは何処だ。
「イプシム…」
うつ伏せになった体を起こし体を震わせる。
体中が何故か痛い。
「明かりをつけてくれ」
反応がない。
何かを冷却しているのだろうか。ファンの音だけだが微かに聞こえてくる。
次第に暗闇に目が慣れ始めた頃、ようやく、小さな明かりが灯ったが、それはアスキスから数百メートルも離れた場所にあった。丸く開いた光源に影が射し人影が現れた。
人影はゆっくりとアスキスに向かって近づいた。
イプシムではない。彼が何らかの方法で、クローン体にインストールされたのだろうかと一瞬思ったが、過去一度もそのようなことはなかった。
アスキスは初めて見る生身の人間の姿に、高揚感と興奮、不安と恐怖を覚えた。
「エラーだ。管理中央AIが、間違って君をこちら側によこしてしまったんだ」
人影はアスキスに語り掛けた。
暗闇に目が慣れたとはいえ、薄暗闇の中では、その人の表情や人相まで判別することはできなかった。
ただ声から男性だということはわかった。
「管理…中…央、AI?」
声を震わせ言葉を発するアスキス。
「たしか、君がイプシムと呼んでいるAIだよ」
「イプシム。そうだ。イプシムだ。イプシムの反応がないんだ。イプシムはどこへ行ってしまったんだ。あんた一体、何者なんだ」
「待て、待て。そう慌てるな。質問は一度に一つずつだ。一つずつ片付けて行こう。それに、その恰好では疲れるだろう」
そう言って人影が指を鳴らすと、仄かな照明が灯りこの空間に光を宿した。
暗闇の中では気付けなかったが、アスキスの近くにイスとテーブルがあった。人影は椅子に座るようアスキスに促した。
見慣れた地下ドーム。に見えなくもないが、違和感を拭えない。超立方体に接続するための浴槽と溶液が見当たらない。いくつかのデスクに一つずつモニターが据え置かれているだけで、壁面モニターもない。
それ以外は、ほとんど見慣れたドームと一緒だが、機材の位置や配置が微妙にずれている気がする。
「私は、アプ・シュ・ルデリンガ。ここの管理人だ」
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