第11話 さらば友よ
「分かった、直美ちゃんはフリーの方がええんやな」
建物の陰に隠れて、五人が作戦を練り直していた。
「当然やん。こんなん、ペア組んだら足引っ張られるん目に見えてるもん。さっきの二人見て、よぉ分かったわ」
「ほんだら……俺は藤原、お前と組むわ」
「おぉ」
「ぼ、僕は?」
本田が泣きそうな顔で聞く。
「心配すんな、お前は坂口さんと組んだらええ」
「……う、うん……分かった……」
「坂口さんは、それでいいですか」
「ああええよ、何とかなるやろ。それよりな、ここにきて一つ問題が起こったんや」
「え……なんですか、問題って」
「聖水がなくなってしもたんや。最初に景気よぉ使いすぎた」
「は、はぁ……」
その時、本田のポケットから携帯が突然なった。
健太郎が頭を抱える。
「おえ本田、お前何考えとんねん。こんな所に携帯持って来て、何に使う気やねん」
「うん。あのね、宏美ちゃんと連絡取り合うんに持っててん」
本田が携帯を手にする。
「アホやめとけ、罠や罠や」
「大丈夫やって。ほら、画面にも『宏美ちゃん』って出てるやろ」
健太郎が止める間もなく、本田が話し出した。
「はいもしもし、宏美ちゃん?」
しかし携帯の向こうから聞こえてきた声は、当然の如く宏美ちゃんではなかった。
低い男の声だった。
「…………アホ」
「え……?」
そう漏らした声と共に、本田が白目を剥いて倒れた。
耳から灰褐色の脳味噌がどろりと流れ出し、そして四人の前で見る見る内に石化していった。
「そやから
健太郎が頭を抱えた。
坂口は好奇の目を本田に向けている。
「なるほどなるほど……これが石化の瞬間なんか」
直美がすっくと立ち上がった。
「私にまかせてもらうよ。次は銃や。銃がどんだけ効くんか試してみる」
「お……おえ直美ちゃん、こんな所で銃撃ったら周りの石像に聞こえてまう、やめときって」
「気ぃ弱いなぁほんまに。金玉ついてるんやろ。そん時はそん時やんか」
言うか言わないか、直美は本田の額に向けてSIGを構えた。
ボンボンボンッ!
三発の銃弾が顔面にヒットした。
顔にひびが入り、首から上がボロボロと崩れ落ちた。
「それから……ショットガンや。おい脂肪、ちょと貸し」
「お、おぉ……」
ズドンッ!
本田の腹に大きな穴が開いた。
しかしまだ、本田の体は動いている。
「やっぱし、とどめはこれやね」
そう言うと直美は、蹴りの猛蹴をぶちかました。
「うおおおおおおおおおっ!」
最後に股間に一発蹴りを入れると、本田の体は完全に粉々になった。
「やっぱ、銃もあんまし役に立たへんね。肉弾戦の方がてっとり早いわ」
そう言って再び額の汗を拭った。
坂口が粉々になった本田の残骸を前に、十字架を掲げてぶつぶつとつぶやく。
「君の事を我々は生涯忘れないだろう……速やかに汝の魂が神の元へと辿り着ける事を我らは祈る。汝の魂に永遠の安息がもたらされん事を。アーメン、ナンマイダ」
「本田……」
健太郎と藤原も、坂口に続いて手を合わせる。
「ほんで、山本君」
「はい」
「いやな、もう聖水がなくなってしもたからな、代わりにな」
「分かりました」
「しゃあないですね、ほんだら……」
ジョオオオオオオオオッ!
健太郎、藤原、坂口が本田の残骸に向かい小便をかけた。
「本田、すまん!これで勘弁してくれ……往生してくれっ!」
「ダークジェノサイト、お前の事は忘れんからなっ!」
「アーメン」
その時であった。
健太郎が妙な気配を感じ、慌ててチャックを閉めて言った。
「坂口さん!」
「ん?どないした」
「どないしたやおまへんて。今の銃声で石像らがこっちに気付きよったみたいですわ」
「私は単独行動とらしてもらうよ」
「よっしゃ、ほんだら直美ちゃんはやつらをかく乱してくれ。好きなだけ暴れてや。俺らはかたまって行くから」
「そうさしてもらうよ。生まれて初めてやから楽しみなんよ、リミッター外すん」
「ほんだらな……」
健太郎が腕時計を見た。
「今は9時半……昼の13時に藤原のマンションに集合や。そんで涼子ちゃん助けて一気に脱出する。ええな、直美ちゃん」
「ええよ、こっからやったら約5キロやろ、十分やんか」
「僕は首に十字架さげてと……よし、行こか」
「はいなっ!」
石像たちが徘徊する中、四人が一気に走り出した。
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