第35話「鎌倉ダンジョン攻略1」
朝から弁当を作っていた涼子が私を尋ねてきたのは午前10時、早すぎじゃないかと思うが自宅で待つもの鎌倉の拠点で待つのも同じかと涼子に鍵を持ってきたと尋ねると持ってきたと答えてくれた。
ダンジョンをマッピングするための方眼用紙と筆記用具それに目印を書くためのスプレーは既に購入済みで収納している。涼子とと2人準備が整ったと外に出ると曇り空だ、これじゃあ外で弁当を食べるのは難しいかもと思いながら涼子の瞬間移動で鎌倉ダンジョンに飛んだ。
「良かった後藤さんまだ来てないね」
「そうだね」
約束の時間より3時間近く早く着いたのに後藤が待っていたら驚愕以外の何物でも無い。小屋の鍵を開けて拠点を出現させると中に入って荷物を降ろす。
「ジュースやお茶持ってきたんだ」
「冷蔵庫も買ってきたから冷やしておこうと思ってね。喉が乾いたら自由に飲んで良いから」
冷蔵庫を取り出しコンセントに繋いでペットボトルのお茶やソフトドリンクをしまっていく、収納された物は時間が停まっているから私自身は冷蔵庫なんて必要ないが涼子や後藤が飲みたい時いちいち私が取り出すのは面倒なので購入したのだ。
「ここの水飲めるように成ったのかな」
「風呂場に出てる水?どうなんだろうね調べて貰わないと分からないけど私は飲む気しないかな」
コスモがこの小屋を拠点に替えた時地下水から組み上げて居る水は水道の蛇口をひねると水とお湯が出るよう改変されている、その際に飲料出来るよう浄水になっている可能性もあるのだが殆ど使っていなかったので確かめては居ない。
そうこうしているうちに雨が降り出した、外で弁当を広げる事は出来なくなってしまった。
「雨振ってきたねどうする」
「勉強でもしようか、授業だいぶ抜けたし」
「えーっ勉強道具なんて持ってきてないよ」
「私のがあるから見せて上げるよ予備のノートも有るし」
午前中一杯は遅れた授業の補習をプリントを使って行う、このプリントは各教科担任が作ってくれた物で有り難く使わせて貰っている。1時間半程勉強を行ってそろそろ昼時だから弁当を食べる事になった、弁当は収納していたのでご飯や味噌汁は温かいままだ保温機能がついた弁当箱を使うより快適に昼食を食べる事が出来た。
弁当を食べているうちに雨の中後藤がやって来た、約束の時間よりかなり早いが車で移動している後藤は正確な時間にやってくる事は難しく早めに行動したのだろう。
「2人とも早いのね」
「朝からお弁当を作ってピクニックしようって思ってたのに雨が振っちゃったから勉強会に変わちゃった」
「そうなのね、若いって良いわね」
後藤に座ってもらってお茶を出すと弁当を食べ終わった後北海道で攻略済の下級ダンジョンを発見した事を伝えた。
「私達以外にもダンジョン攻略している連中が居るって事ね」
「それはそうなんですけど、問題は下級ダンジョンがアチコチにある方が問題だと思うんですよ」
後藤は私達の他にダンジョンに入れる人間の出現を気にしているようだが下級ダンジョンが複数有ることには危機感を抱いて居ないようだった。
「それって何か問題がある話なの?」
「ダンジョン討伐で中級ダンジョンの攻略期限が2000年まで伸びたって涼子が神託を受けたじゃないですか。その地域が狭まったかも知れないって言う話ですよ」
「北海道にも下級ダンジョンが有ったからか、そうなると沖縄や九州にも未討伐の初級ダンジョンがあるかも知れないって事か」
「どの範囲までダンジョン攻略の効果があるか分かりませんからならいっそ下級ダンジョンを攻略することによって情報を得られないかと思ったんです。私達まだ中級ダンジョンを見つけても居ませんし」
私の考えに後藤は納得してくれたようでじゃあ早速ダンジョンに潜りましょと言うとカバンの中から防具を取り出して装着しだした。
「どうされたんですかその防具類は」
「コスモ君から買ったのよ」
何事も無い風でそう言われたがリアルトレードマネーでクレジットを得るには換金率が悪すぎると思うのだが、こっそりと後藤を鑑定してどの程度の装備を得たのか調べる事にした。
後藤明菜戦士31歳レベル11、ちょっと待て後藤のレベルは5だった筈なのだが6も上がっている、これは1人こっそりとダンジョンに潜っていたと考える方が自然だ。私でも1人でダンジョンに入る気なんて無いのに後藤は何を考えて居るのだろうか。
「コスモ君と一緒に仲間探しってまだやってるんですか」
「時々ね、今の所貴方達2人以外には見つかって無いけどね、それより今日中に完全攻略しちゃうつもりなの?」
「どうですかねダンジョンの広さも分かりませんし」
後藤が中に入ってマッピングしてないかとカマを掛けたつもりだが乗ってこなかった。
「そうよね」
私と涼子も装備を整えダンジョンに入る準備を終えた。ダンジョンの入り口から最初の部屋に移動するまで涼子と後藤が先頭になって私が後衛を務める、最初の部屋のゴブリンに対して出現直後に後藤が戦斧で切りかかって瞬殺した。私と涼子の2人はやることが無い程後藤が手慣れた手付きでゴブリンを屠った事を鑑みるとずっとこの場所でゴブリンを狩っていたのでは無いかと予想してしまう。
「ゴブリンの処理はどうしようか、聡志君もアイテムボックス持っているのよね」「収納しますよどれだけ入るか分かりませんが」
「そう、うんそうよね、容量なんて試してないか。私コスモ君から買取部位を聞いてるから入りきらなくなったら教えてね解体してみるから」
通路は二択だったので以前と同じく左に入る方眼用紙に小部屋と通路それに壁にはスプレーで番号を書き込み進んでいく。次の部屋は少し強敵が湧いたのだが今回はどうなのだろうか。道中の雑魚を蹴散らしながら次の部屋に入ると以前とは違う敵が湧いて居たゴブリン三匹でホブですらない、先制攻撃に私が魔法を放つとそれだけで三匹とも瀕死の重傷を負ったようだ。
「以前たおした敵とは違う奴です」
「ゴブリン三匹だったわね、部屋に現れる敵のランクはランダムなのかしら」
ゴブリンを収納してマップに書き込んで今度の二択も左に進む左左に進んでいってどうなるか試すつもりだ。今度の通路はこれまでの通路とは別物でかなり距離が有る、道中に雑魚キャラが湧かないから何か有るのではと緊張感がただよいながらも進んでいく。
「アレって宝箱よね」
「そうですね」
「なんで宝箱なんかがダンジョンに置いてある訳?誰かが隠し持っている訳じゃ無いわよね」
「さあどうなんですかね、私が持ってるこの銅の剣は初級ダンジョンの宝箱から手に入れた物なのです。どういう意図があるのかは分かりませんが有り難く使わせて貰いましょうよ」
後藤と会話を進めている間に宝箱を鑑定したが中身が何かと言うことは分からないただこの宝箱に罠が仕掛けられて居ない事だけは判明したので私が進み出て箱を開けた。
「マントなんですかね」
「コスモ君に鑑定してもらうまでは聡志君に収納してもらっていたほうが良さそうね、呪わでもされて居たら大変ですもの」
最もだと同意して私はマントを収納する、私の鑑定ではマントは風のマント言う鑑定結果しか出なかった、効果についてはさっぱり読み取れない。マントの他に宝箱も収納出来ないか試して見たが無理だった、このあからさまに不自然な宝箱にも何か秘密があるのかも知れない。
行き止まりだった部屋を引き返して一つ手前の部屋に戻る、部屋に仕込ま出ている召喚の罠は発動せず次は右の通路を選択し進んでいく。今日一日で13の部屋を回った結果私と涼子のレベルは17に後藤のレベルは14まで上がって上がって居た。
「今日出てきた敵の強さってレベルが低いって感じがしなかった?」
拠点で今日の攻略内容について話有って居たが遭遇した敵のレベル雑魚は5から10の間で小部屋で召喚される敵は10から15レベル程度の相手がランダムで襲いかかってきた。
「コスモ君と3人で来た時にはレベル16の相手が現れたんですけどアレはレアケースって事だったんですかね」
「そういう事もなのかしら、そう言えば2人に伝えて居なかったけど新しいスキルを覚えたわよ」
「どんなスキルなんですか」
「強打って言うスキルで普段より強い攻撃が出来るのその代わり強打を放った後しばらく身体が重くなって動きが鈍るのが弱点ね」
今日見てきた限りそんな素振りは見せて無かったので使うまでも無い敵ばかりなのだろう今日覚えた訳じゃなくレベルが10に成った時に覚えたのであろうことは想像に固くない。後藤の性格からして覚えてすぐ散々使ってきたのだろう。
「来週はコスモ君も参加するのよね、それまで素材をアイテムボックスに入れっぱなしにしておいて大丈夫?」
「大丈夫だと思いますが駄目でも拠点に置いておく訳にもいかないでしょ」
「それはそうね、了解したわ。ねえ2人ともテニス経験者って言ってたわよね」
そんな話を後藤にしていたか覚えはないが後藤が知っていると居ると言うことは話て居たのだろう。
「経験者と言っても部活で半年くらいしかやってませんよ」
「午後から時間あるならコートでリハビリに付き合って貰えないかな、遊び気分で息抜きに」
涼子と顔を見合わせてアイコンタクトを送ると涼子が久しぶりにテニスがしたいと言い出したので反対する理由も無く後藤に付き合ってテニスコートに同行する事となった。
後藤の車に乗って連れて来られた場所は都内にある公式戦も行われているテニスコートだった、利用料金は一時間で1000円高くないかと心の中で呟いたがこれが東京価格と言われたら納得出来る金額でもある。料金の支払いは後藤が行いラケットは後藤が貸してくれた、勿論シューズなんて持ってきては無いがそんな本当にお遊びテニスなら必要無い。上下ジャージの涼子に対して後藤はテニスウェアに着替えている、このテニスコートを運営している教室に席を置いているようだ。
「涼子ちゃんからサーブをお願いしていい?」
「良いよ、私も久しぶりだからコートに入るか自身ないけど」
涼子がボールを高く上げると綺麗なフォームでボールを撃ち抜く、弾丸のようなボールは後藤のすぐ脇を通って行ったが後藤は一歩も動けず固まっていた。沈黙している後藤に変わってボールを拾いに行ったがこれ以上試合にならない事を確信した。
「後藤さんボールが破裂してるんでこれ以上試合は無理そうですよ」
「へーそうなの、ちょっと見せて貰えるかな」
上ずった声の後藤に破損されたボールを見せると後藤の引きつった笑い声が聞こえて来た、どれだけの力が働くとテニスボールが破壊されるのかは分からないが後藤が一歩も動けない程の速度が出ていた事は確かだ。
「想像以上ね、私もレベルが上がったら涼子ちゃんみたいな球が打てるのかしら」「そんな球が打てるようになったら試合に成らないんじゃ無いですか」
「それもそうか、じゃあ聡志君涼子ちゃんの代わりに相手になってよ」
涼子に変わって私がコートに入った、サーブは私からで軽くラケットに当てたつもりだったのだかとんでもない方向に飛んでいってバックネットに当たって止まった。
「涼子ちゃんとは別の意味で無理そうね」
「面目有りません」
私じゃ話にならないと言うので手を抜いた涼子と全力の後藤がコート狭しと動いてラリーを続けて居る、二人がどの程度のレベルで打ち合っているのか私には分からないが少なくとも涼子の動きが女子中学生の範囲に収まらない事だけは理解出来た。
1時間程練習が続いて後藤の体力が限界に達し所で終了という事になった、着替えが終わると後藤は東京駅まで送ってくれて駅で別れた。駅の構内には入らず人気がない路地裏に入るとそこから涼子の家の前に飛んだ。
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