貫通

私の母と祖父(母の父親)が体験したエピソード。

当時、母親は小学校低学年くらいだったと言っていた。


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母と祖父は大きな池のある公園に遊びに来ていた。

その池では手漕ぎのボートに乗ることができ、母の希望で一緒に乗ることにした。


祖父がボートを漕ぎ、母は景色を眺めていた。

その時、母の左手の人差し指に激痛が走ったのである。


何かと思って見てみると、小さなクワガタムシのアゴが人差し指の先端に突き刺さり、クロスするように貫通していた。


痛みの原因を見てしまったことでパニックになった母は、その場で泣き始めてしまった。


異変に気づいた祖父は、クワガタムシの胴体を指で掴むと引き千切り、頭と体を分断。


しかしクワガタムシの生命力はかなり強く、頭だけになってもガッチリと人差し指を挟んでいた。

というより、肉を突き破って貫通しているため、クワガタムシ的にもアゴが外れなくなってしまったのだろう。

体も引き千切りられ、被害者は母なのかクワガタムシなのかわからない状況だ。


祖父はすぐに陸へ引き返し、そのまま母を病院に連れて行った。

簡単な手術でクワガタムシの頭は取り外され、母は事なきを得た。

クワガタムシは哀れなことに、意味もなく死んだ。

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