初めての仲間

「ついに、倒したぞ...!!」


ニイルは手を震わせて喜んだ


「いや、まだだ。猩々寝てるな起きろ」


俺は猩々に刺さっている槍を抜いた


「やってることえぐいな」


ニイルは拷問とも言える、ユラの所業にドン引きをしていた


「うっ...!」


猩々はうめき声を上げながら目を覚ました


「これをやるから、とりあえず敵意はしまっとけ」


俺はそういうと、腰にかけてあった瓢箪ひょうたんの水筒を猩々の頭元に置いた


「なんだこれは」


「いいから、飲んでみろ」


猩々は、ゆっくりと体を起こし地面にあぐらをかいて、瓢箪の水筒の中身を飲んだ


「これは!?」


俺はついニヤけてしまう


「猩々が大好きな物だ、変に殺意が高かったのもこれのせいかなって思っててよ」


「さ、酒だ! まじか! 何年ぶりだ!」


猩々は歓喜の声をあげると、さっきまでのキャラと打って変わり陽気な性格になった


「うほー! やったぜ!酒だー!」


「なぁ、これはどいうことなのだ??」


ニイルは今起きている状況が判断できず困惑していた


「それはな、猩々が...」


「こ、これは! 日本酒! 多くの同胞がそれを飲むためだけに船に乗り込んで大航海したという、伝説の酒!!」


「ごほん!猩々が...」


「これが米から作られてるという日本酒! 中々アルコールが高い! ビールも炭酸が効いてて美味いが日本酒も格別だ!」


「静かにせい!」


猩々は自分が浮かれていたのを自覚して大人しく瓢箪に入った酒を飲み始める。 いや、怒られても飲むんかい


「まぁ、猩々は見た通り酒好きな妖怪なのだ。 猩々が住んでいる国では、酒造庫には必ず猩々は存在し、酒造庫に危機を与えようとする者は人間・妖怪構わず襲うとまで言われているそうだ」


俺が説明すると猩々は頷いた


「あぁ、それはあながち間違ってはいないが、一つ訂正を入れるなら、良い酒を造っている酒造庫にしか俺らは存在しない。 良い酒を造っているとこを守って、お礼にその酒を造っている人からお供えでもらうのが、ルールだ」


ニイルはその話を聞いて、なるほどと頷いた


「しかし、なんで猩々がお酒を求めているのはわかったんだ?」


「酒臭くなかったからだ」


俺は即答でその問いに答えた


「え?」


「酒臭くなくて、あの気性の激しさは、自分が好きな酒がしばらく飲めてない事での機嫌の悪さが原因かと思ったんだ」


あまりの回答にニイルは呆然としてた


「あぁ、そうだ。 しばらく酒飲めてなくてここ数年すごい機嫌悪かった」


猩々はそれに追い討ちをかけるように答える


「まじかよ...」


まぁ、機嫌が悪いだけで1つの山を奪い取るほど猩々は単体だけでも強いってことなんだがな


俺は猩々の体を見てあることに気づいた


「傷が塞がっているな」


猩々に突き刺したはずの槍の傷がもう塞がっていた。猩々は自分の塞がっている傷を見た


「あぁ、俺ら猩々は酒が好物なのと同時に、治癒力を爆発的にあげたり、力を底上げしたりすることにも使えるんだ。 猩々にとってはお酒は切っても切れない関係にあるんだよ」


なるほど、お酒自体が自分の力を覚醒させるためにもなるのか


「なぁ、猩々。 お酒をやったお礼に1つ頼み事を聞いてくれないか?」


猩々は立ち上がり俺の方を見た


「なんだ?」


「ここは元々リザードマン達の住処だったんだ。 返してくれないか。」


猩々はしばらく考えると


「1つ条件をのんでくれたら。 その頼み事を聞こう。」


「なんだ?」


「あんたの旅に同行させてくれ、このお酒を飲んで分かった。 あんたは酒の味がわかるやつだ。 あんたについて行けば良い酒に巡り会える気がする」


俺は、ただ元の世界に戻りたいだけで、お酒巡りしてる訳じゃないんだがな。 まぁ酒は好きだから行くとこ行くとこ酒は飲むだろうし、まぁいいか。


「好きにしろ」


〈称号を得る事ができました。 称号・統率者(とうそつしゃ)〉


「ん?なんだ?」


「どうした?」


ニイルが不思議そうに聞く


「今聞こえたか?」


「いや?」


気のせいか、でも今統率者って聞こえたような。


【称号を得ることで姿・体型が変化し唯一無二の姿になれる】


ニイルの前に言った言葉を思い出した。 俺は慌てて自分の足や手を確認する


「「??」」


猩々やニイルは、ユラの不思議な行動を見て不思議そうな顔をする


「変わってないな。 ただの気のせいか」


ニイルや猩々の様子を見ても驚いた顔をしていないから、顔も変わってないみたいだ


俺は不思議な声の謎に疑問を持ちつつ、猩々を仲間にした。




「ぬらりひょんか...」


猩々とぬらりひょんの対決を陰から見てた謎の人物は、そうつぶやき、その場から離脱した


その正体を、ぬらりひょんのユラが知るのは、しばらくしてからであった

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