勇者、美少年と出会う
「にゃはは! 今日も市中は賑わっておるの。よいことじゃ!」
初夏の陽気に照らされ、大勢の人々が行き交う江戸における商家と町民の中心地の一つ、
幅広で清潔な砂利道の左右にはずらりと大きな平屋や二階建ての商家が
通りの幅はそれこそ十メートルはあるのではと思えるほどに広かったが、道行く人々の多さはその広さでも全く足りておらず、肩に
「いい加減慣れてきたけど、それでもやっぱり凄い人だな……! 東京は昔からこんなんだったのか!?」
「とうきょう……。ほむ、
「ははっ。
神田町の大通りを凪と連れ立って歩きながら、かつて自分が住んでいた時代との違いを懐かしそうに語る奏汰。
そして今。そう言って笑う奏汰の手には、
「奏汰のいたとうきょうのように、皆が平和に暮らせる町にするためにも、やはり鬼共は根こそぎ
「お! あの字なら俺にも読めるぞ!
「そりゃ
目当ての
凪の言う通り、正午を過ぎた今の時間は、ちょうど休憩中の人足達や
「へいらっしゃい……! って、誰かと思えば
「邪魔するぞ」
「お邪魔しまっす!」
凪と奏汰が共に大きく開かれた店の扉をくぐると、そこにはいくつも長椅子が何列も並び、着物姿の人々が
「ほむ、
「いやぁ! さすが姫様は相も変わらずお美しいことでっ! そんでもって……そっちの鬼みたいにデケぇのは……?」
店に入ってすぐに凪の姿を見た店主――――馬三郎と呼ばれた
馬三郎はどうやら凪とは顔なじみらしく親しげな様子だったが、凪と共に現れた奏汰には目を丸くして
「初めまして! 俺は
「へ、へえ……? ゆうしゃ……ですかい? なんでぇそりゃあ?」
この時代、男性の平均身長はそれこそ150センチ半ばもない。現代でもやや長身の部類に入る174センチの奏汰は、江戸の人々から見ればまさに鬼のような大男と言って差し支えなかった。
「実はの、お主も先日の鬼とあやかし衆の
「な、なんだってえええええ!? た、確かにあっしもあの戦で
「あれは俺だけじゃないだろ!? 凪も一緒に戦ったし、
「にゃはは。そう
どこか自分のことのように誇らしげに語ると、凪はそう言われて
だが、凪のその話し声はしっかりと店内に響いていた。
江戸中で噂になっていた、
「それでの、実は奏汰はまだ江戸に来て日が浅いのじゃ。こんなに強いのだし、なにか商売でも始めないかと私からも
そんな店内の様子には目もくれず、凪は奏汰の持つ
「ちょっといいですか? 今のその話、僕にも詳しく聞かせて貰えませんか?」
店主の前でいそいそと和紙を広げてみせる凪の横から、良く透る美しい声が響く。
見ればそこには、かっちりとした印象の淡い
しかしいかに幼く見えるとはいえ、少年の腰には二本の刀がしっかりと
「ほむ? なんじゃお主は?」
「これは申し遅れました。僕の名は
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