第3話 コンニチワ

旅を続けた青年は、とある国で国王より勅命を受けた。


国が緊急事態に陥ったときに発令される出動命令。


相手は同族を手に掛けたあと、様々な種族の集落を堕としてきた邪竜だった。


青年の所属していた集団は邪竜のたった1度の攻撃でその数の約半数を失った。


青年もその初撃にやられてしまった。


満身創痍となりながらも気を失っていなかった青年は最後の力を振り絞り、邪竜に向かって魔法を放つ。


その瞬間、ボクが見える景色…夢は真っ白になった。


~~~~~~~~~~~~~~~


………。


うたた寝から目覚め、微睡みからゆっくりと現実に引き戻される。


今の夢…。


悲しく険しく短い人生…。


でも、ボクはなんであんな夢をみたの?


夢のはずなのに…とっても現実味を帯びていた。


もし本当のことなら、ボクと同じように不幸な目に遭ってる人間もいるんだ。


世界は広いから。


きっとボクより不幸な人はボクが思ってるよりとても多くいるんだろうな。

と考えさせられる夢だった。


ケトルの火はすっかり消えていた。


けどまだお湯は冷めてなかった。


ボクはお茶を淹れて一口飲んだ。


ふぅ~。


あんな夢をみたからかな?


…何故かやっと落ち着いた気分。


そのとき…ボクの頭の中?で叫び声が上がった!


(なんだこりゃあー!?)


「え!? なになに!?」


(ちょっと待て!お前は何だ!?何がどーなってんだ!?)


「なにこの声?なにこれ?こわい!」


「あっ!そうだ!誰かの悪戯だね!? ボク知ってる! これ念話って魔法だよね?」


(……。 スマン。 たぶん違うと思う。)


「え!?だって声が直接頭の中に聞こえてくるもの!意地悪しないで!?」


(その、意地悪とかじゃなく本当に違うと思う。)


「えー!? じゃなに!? こわいよ! それとも…ボクがおかしくなったの…?」


(いや、なんていうか…俺は念話を使えるからわかるんだか、念話は言葉を交わすことはできても感覚は共有できないんだ。なのに俺はお前が見ているものが見え、触れたものの感触がわかるんだよ。…それってもう念話じゃ説明つかない。…それに…。)


「え? それに?」


(俺は…てっきり死んだと思ったんだが…目覚めたらこの状態だったんだ。)


「え?え? 死んだ?…って…あれ?その声…。」


(俺が死んだと思う前とは感覚が全然違う。…それに自分の意思で体が動かせないんだ… これって?)


「あ、あの…その声って…アルト?」


(は!? お前!何故俺の名を知ってんだっ!? お前は何者だ!)


「あっ ごめんなさい!…その~さっき寝ちゃってたら夢でみて…。」


(なんだ?どういうことだ?わかるように説明してくれ。)


それからボクはさっき夢でみたことをアルトに話した。

どうやらボクが心で思ったことや頭で考えたことは伝わらず、言葉にしないと伝わらないみたい。

アルトも同じこと言ってた。

あと、一緒にボクの生い立ちも簡単に話した。


(なるほどな…。 何の因果かわからないが、どうやら俺という人格がお前の中に入ってしまったみたいだな。)


「え?そうなの?…そうだね。ボクも他に考えつかないもの。」


(スマンな。迷惑だろうが俺もお前からどうすれば出られるのか…見当もつかない。出ていきたくても出られないんだ。)


「んーん。いいよ。ボクも寂しくないし。 ちょっと嫌だけど。」


(できるだけ邪魔しないように、なるべく目を瞑ったり寝てたりするから。)


「ボクが目を開けててもアルトは瞑れるの?」


(ああ。だからいつでも言ってくれ。)


「うん。わかった。…あと、ボクの名前はセナだよ。」


(おま…セナか、了解だ。どうやら俺のほうが年上のようだから、知ってることなら教えるし相談もしてくれ。)


「うん。ありがとう! アルトは仲間思いで優しい人だって夢でみて知ってるから。すごく嬉しいよ。」


(お、おう。)


「あとね?さっきちょっと嫌って言ったのはアルトはズルいなって思ったからなの。」


(ズルい?)


「うん。だってアルトは話してもボクの頭の中にしか聞こえないけど、ボクは声に出さないとアルトとお話しできないんだよ? 傍からみたら独り言ずっと言ってる変な人に見られちゃうよ?   …まあ、誰にも会わないけど。」


(そ、そうか。スマンな。しかし俺にはどうすることもできんのでな。 でも、あれだ!逆に俺の言葉はセナの協力がないと誰にも伝えることができないぞ?)


「えー? だってアルトは念話を使えるんでしょ?」


(あ! …そうでした。)


「それならボクの協力必要ないよ。」


(でも、な。まだ試していないから何とも言えんが、俺の推測が間違いないなら念話は厳しいと思う。)


「なんで?使えないってこと?」


(いや、念話もそうだが、何かしらの方法で他の魔法を放つことができたとしても、それはセナの魔力を使うことになるんだ。 俺は人格だけの体を持たない存在だからな。当然魔力もない。 で、俺が感じるにセナの魔力は勝手に使ったらマズそうだ。まあ、セナが承諾してくれたら使えるかもしれんが。)


「?…そっかぁ。」


(あとはセナの魔力量と質だな。 常人より4倍くらいの量は感じるが、何か異質に感じるな。セナが承諾してくれたとしても俺に扱えるか自信がない。)


「異質…。 それってボクが混血種だから?」


(そうかもしれん。だが、悪い感じじゃない魔力だ。 例えると…生き物には多かれ少なかれ必ず魔力を内包しているものだが、皆それぞれ色があるんだ。それぞれに違う色だ。ちなみに俺は青い魔力らしい。だが、セナの魔力は…俺には無色透明に感じる。)


「透明…。」


(ああ。透明ってことはどんな色にもなれる可能性があるだろ?逆にどんな色にも対抗できるのかもしれん。 だから俺は悪い感じとは思えん。)


「うん。そうだよね! とっても凄いことかもしれないよね!」


(そうだ。何でも悪く捉えないことだな。 で、だ。 話しを戻すと俺が使ってた青い魔力じゃなく透明の魔力をこの俺が扱えるかどうか自信がないってことなんだ。)


「そっかぁ。それなら色々試してみようよ? ボクも魔法って使ったことないし。 もし使えたら嬉しいし! 時間もたくさんあるから。」


(おう。そうだな。そうするか。)



そしてボクとアルトはその後も色々なお話しをして、お昼ご飯を食べた後に外へ出て色々と魔法を試してみたんだ。

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