8日目、幸せはキミのナカに 前編

 ……ホゥ。(思わし気なタメ息)


 初夏の夕暮れであることよのう……。

 心ならずして、コジカらしからぬことを、つい、考えてしまったられなんかしてしまったりすることで御座候。


 ……あんこ、食べたい。


「食えよ勝手に」


 ねぇ、メブちゃん。

『幸せ』ってなんだっけ?


「あ?」


 家に美味い醤油があることだっけ?

 それともポン酢しょう油があることだっけ?

 たしかに、だいたいなんでもポン酢かけときゃ美味しく食べられるけどねぇ。

 いや。

 でも、さすがに、あんこにポン酢は……。

 チャレンジしてみる価値はあるかも知れないな。


「ねぇ。頼むから、初っ端から良く分からない迷路に迷い込むの、やめてくれない?」


 ねぇ、メブちゃん。

 メブちゃんメブちゃんメブちぁゃん。


「だっ。なによ? ってか迫って来るなよ。鬱陶しい」


『幸せ』ってなんだろねぇええええ?


「はぁ?」


 コジカっていま、『幸せ』なのかねぇえええええ?


「知らんがな。ってか、なに? なんなのさ急に」


 急にと言えばさ、ドラゴンボールのクリリンの額に並んでる6つ茶色いの黒子みたいな、アレ。

 アレの正式な名称知ってる?


「知らん。知らん。ってかアレって名前あんの?」


 あるのよ。

 あれはね、戒疤(かいは)っていう、お灸の痕なんだって。


「へぇ、お灸」


 昔の中国で、仏教の僧侶が『自分は一生、仏教一筋! 釈迦LOVE! 仏恥義理だぜぇえええっ!』っていうのの証として、ヤキ入れてたんだって。


「宗教的な意味のあるものなんだ、アレ」


 まぁ、ドラゴンボールの世界の神様っちゃ、ピッコロさんだけどね。あ、仏教は神様じゃなくて仏様だからいいのか。


「神様仏様。まぁ私ら日本に住んでる身としては、身近なようで、あんまりよく分かってないことだよね」


 宗教にでも入れば……

『幸せ』がわかるのかねぇ……


「あww それ、一番やっちゃいけない考え方だ」


 はぁぅああああああああああああああああん。

『幸せ』って、なんなぁんだろぅおねぇえええええ?


「……コジカさぁ」


 はぁぁあん?


「ちょっと、後ろ足をこう、左右に開いて立ってみ」


 え?

 なんで?


「いいから」


 くぱぁ。

 これでいいの?


「『立て』って言ってんでしょが! 仰向けで股を開けとは言ってない! ってが見苦しいぃぃぃぃ」


 ……なによ、もう。

 注文の多い方ね。

 ハイハイ。

 後ろからね?

 後ろからが好きなのね?

 まったくぅ。

 ケダモノみたいな方ね。


「あんたはシカで、私ブタだから。『みたい』じゃなくてケダモノだし」


 きゃっ。

 ん、もう。

 正直な方ね。

 でも私、そういうのって嫌いじゃないわ。

 はい、どうぞ。

 ……優しくしてね? 


「はいはい。もーちょっと足開いてね。OKOK。えーと、『アレ』はどこへやった……?」


(やだっ)

(まさかのアイテム使用!?)

(イキナリの上級編)

(ハードモード!)

(スーパーマ〇オブラザーズ2!)

(コジカの残機で足りるかしらっ!?)


「あ、あったあった。これをこう……しっかり握って、と」


(ににに、握る?)

(何を? ねぇ何をっ!?)


「よーし、じゃ行くヨー」


(イクのねっ? イクのねっ!?)


「せーの、ふんっ!」


 ブンッ!!

 スフィッ。


 えっ?


 ガコッ。


 ……………………ぅぅうぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!?


「ふん。あー、リコーダーばっちぃ」


 タマがっ!

 タマがぁあああああああああああああああああああっ!!?

 コジカのご本尊様がぁあああああああああああああっ!!!


「ちゃんと逝った?」


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴローッ。

 あばばばばばばば。

 のたうち回るぅう。

 あああああああああっ!!


「元気だな、おい。さすがの『グラッ〇ラー刃牙』でも、花田ってレスラーが片方潰された直後は、動けないでいたってのに」


 くっ。

 かかかっ。

 メメメ、メメメメメメメメブゥ……!

 きしゃま、何のつもりだぁああ?


「なんのつもりって……いや、コジカがあんまりに鬱陶しいから、リコーダーでキン〇マをカチ割ってやろうとしただけだけど」


 ガがガガガが……。


「なんか、マズかった?」


 マズかった? って。

 そんなイノセントな笑顔で問い返されても。

 ってか、それ、サイコパスの考え方やんけ。


「まぁ、ほら。『幸せ』が知りたいんでしょ? そのキン〇マの激痛が治まったら、きっと今よりは『幸せ』に感じられるよ」


 ますますサイコパスや!


「でも、『幸せ』なんて、そういう自身の在り方の、些細なことで変化する程度のもんなんだよ、きっと」


 さ、些細じゃない。

 キン〇マ存亡の危機は、ぜんぜん些細なことじゃない。


「って言うかさぁ。なんで急に『幸せ』がどうとか言い出したのよ?」


 そ、それは……。

 あっ。

 ががががががが!

 こ、腰!

 腰を後ろからトントンして!

 トントンしてぇええっ!

 上がってるから!

 ご本尊がコジカの中にメリ上がってるからぁ……!


「んだよ。メンドくせーなぁ。ホラ、こっちに腰を向けてみ」


 スフィッ。


 だああっ!

 リコーダーは置いて!

 ってか、もう捨ててぇっ!!


「わーった、わーった。ハイハイ、これがいいのね? トン、トン、トン、トン、トン……」


 うん、うん、うん、うん、うん……。

 お、う。

 下がってる感じ。

 涅槃から、再び現世に降臨されてる感じ……。

 おおう、ふ。


「で?」


 え?


「え? じゃなく」


 ぺ?


「えぇと、リコーダーは……」


 ごめんごめんごめん!


「もう余裕出て来てんじゃねぇよ」


 てへぺろっ♪


「もっかいナメた感じで返したら、次はリコーダーでコジカの本尊をBボタンみたく連打すっからな」


 ひっ。


「それで?」


 え、ええと?


「だから『幸せ』」


 あ、あぁ『幸せ』ね。

 ええと、それは……。


「それは?」


 じ、次回までの宿題でいい?


「!」


 リコーダーはやめてっ!

 ナメてないから!

 全然ナメてないから!

 ただ……。


「ただ……なに?」


 今からそれを語るには、ちょっと前フリが長すぎたかなぁって。

 だから次回で仕切り直したいかなぁ、なんて。


「……………正気か」


 う、うん。


「今回まるまる、ホントーに何のハナシもしてないぞ? 役に立つ内容ひとっつもないぞ?」


 い、いや、それはホラ。

 元々、そういうコンセプトのアレだし。

 脳ミソースのムダ使いをしたいときに読むものだし、これ。


「……」


 あ、あ。

 でもほら、クリリンのオデコの秘密はトリビアだったでしょ?


「……クリリンに免じて」


 え?


「クリリンに免じて、1回だけは見逃してやる」


(メ、メブちゃんってば……クリリン推しだったのね)


 次回に続く!

 全裸土下座!!

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