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枕草子の作者の名前を暗記するために、ノートに十回も書いたり、テストの当日に友達に問題として出してもらったりしていた、中学生のとき。小雨が降るにもかかわらず水泳の授業が
藍子はターンをするときに、思いっきり水を飲み込んでしまい、プールサイトで
あの教師のことが嫌いだったことを思いだす。男子のあいだで流通していた「マグロ」という一方的で身勝手で想像でしかない性交への評価を、改めておさらいし、声がでないように笑った。「マグロが泳いでるぞ」という男子たちの冷評は、クロールをしている教師には聞こえていないことだろう。しかし当時の藍子は、もしかしたらこの教師は、どんな体位もそれなりに得意にしているのではないかと考えることもあった。
しかし藍子は、その頃から、高度なテクニックをひとつふたつ身に付けていた方が、オトコは悦ぶものだと、もうすっかり
この不均衡が示すのは、藍子の優越感でも小太郎の劣等感でも、凹凸が組み合わさり長方形になるということでも、水と油の関係であるというわけでもない。陽と月だ。それ以上に適当な形容表現があるとしたら、藍子と小太郎の技術のいくつかを転倒させた先にしかない。陽である藍子と月である小太郎の性戯。不等式な等式。
プールサイドで体育座りをしていたとき、向こう側の男子の群れを見ると、ひとりが股間に注目が集まらないように振舞っているのを発見した。平時のものを知らないから、どれくらいの状態へ変貌を遂げているのかを判別することはできなかったが、おそらく、半分ほど頭を
見るからに
これだけの騒ぎがあってもなお、いや、それだからなのか、まだ彼のものは
運転席の窓が下げられた。辺りを見回してから、藍子は小太郎の唇に吸い付いた。陽はちょうど斜めに降りそそぎ、絶え間なくふたりの唾液を祝福していた。勿論、
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