55
慶長八年、
上記のことは、矛盾や錯綜を意味しない。むしろ、調和を表わしていると言ってもいい。しかし、この文章がハーモニーを奏でるためには、片方を形容的な用語として扱わなければならない。つまりこう置換される。まるでレヴィ=ストロースの『親族の基本構造』を読んでいるような、丁髷に結い鴎尻に太刀を佩いた裃を着た武士……こうした文章に直せば、その意味が通じないこともないし、調和を示しているといえなくもない。
しかしここで問題となってくるのは、まるでレヴィ=ストロースの『親族の基本構造』を読んでいるような、とはどういう形容表現なのかということである。「インテリゲンチャ」や「スマート」と同一的なものなのだろうか。だとしたら、いままで示してきたような形容表現を用いることに必然性が伴わないことになる。つまり、ある形容表現を選びとることは、偶然に近いのである。より簡潔に表わすならば、「まるで~のような雪」というときの「~」には、任意の表現を入れることができる。そして書き手により選びとられた「~」には、必然性が宿ることは
と、こういう導入から――空想の接木で資料を繋げた――物語をはじめると、筆者を
彼女の名は、
《わたしの死後、この日記を公開してください》
つまり、藍子はもう死者の中に数えられているのだ。しかし彼女はこんなことを日記に書いていた。
《天国で何人もの男性と肌を重ねることで、地上のくだらなさを証明して見せます》
これから我々は、藍子と、彼女の身勝手に振り回された男性たちのことを、彼女の視点から見ていこう。最初の男性の名は、
しかし、一話だけ、筆者に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます