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「もし自分に抱かれてしまったら、あなたはもう、戻れなくなりますよ」
がらんどうの
劣位に置かれた者が、優位に居座る者へ、叛逆する。いや、優位という概念の内側に、劣位は潜み、それらは混交し、眠っていた獣が目を赫く光らせる。……
「でしたら、できるところまで、続けましょう。そうした関係を」
鹿島の部屋の周縁にあった渡り廊下は、中庭は、
「寒い……」
「そうでしょう。抱かれる前は、寒いものです」
「けれど、温くしてくださるのでしょう」
鹿島は、目を
転倒した子どもの膝頭を流れる血から、目を逸らし、汗のにおいのする髪を撫でる、寓話の如き擬態。……
「
「だれかに気付かれてしまうかもしれませんよ」
「なら、下着を
「そういうことではないのです。直感は、五感を超越しますので」
「でももう、あなたのここは……」
ふとんの下に手を忍び込ませた彼女の母は、彼の獣性を煽った。ライオンの尻尾を洗うように、繊細に。鎌のような三日月を、
「あなたは、フランス文学を読みますか」
「どうして」
「静かな夜ですから」
「そう……」
彼らは月明かりだけを頼りに、冷たい唇を貪りあった。
晴れない霧のなかへ、目を
ペエパア・ナイフを取りだし、巻煙草をくわえながら封を切る。なかには、一枚の絵。ラベンダー畑に寝そべり、永久の栄華を
「もう、堪忍して頂戴……
庫裏の裏の山の稜線に、
彼女の母はもう、どこかに引っ込んでしまった。
鹿島は天井をぼんやりと見つめながら、これから彼女の母を何度も抱くことになることを思い、放蕩に
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