目覚め






静寂。


その言葉でしか言い表せない程音のない世界で一人の青年が目を覚ました。


「ど、こだ?ここは」


体に力を入れ、起き上がる。

瞬間、激痛がーーーーー走らなかった。


ここであることに気づく。


「傷が……ない。」


あれだけ剣で斬られて致命傷でないはずがない。


「なんで治ってるんだ?」


疑問に思い、そして辺りを見渡す。



人、一人いない。

だか右を見ると人一人がギリギリ通れそうな穴がある。


穴は地獄の入り口かもしれないが出口ではないことは確か。


「傷が治ったことに関しては考えても仕方ないか……」


自分しかいない奈落の底で思わずため息を溢す。


その時、声が響く。


『マスターの傷が治ったことに関しては私がモード1aアルファを実行した為です。』


はぁっ!?


「だっ、誰だ!?」


『誰……と仰いましても私は私です。』


いや、そういうことを聞いたんじゃねーよ!


辺りをもう一度見渡す。

誰もいない。


「お、おーい?」


『はい、何でしょうかマスター?』


はい!おかしい!


何で誰もいないのに会話出来てんだよ!


『それはマスターと私が主従関係を結んでいるからです。』


へぇ、そうなんだ。


『はいそうです。』


いや、なんでだよ!何で声に出してないのに会話ができんだよ!


一瞬、納得仕掛けたぞ?!


もしかして…………念話か?


『はい、その通りです。』


「…………」


………一回落ち着こう。


………よし


「それで君は誰なんだ?」


『その質問に応えますと私はマスターのスキルの補助システムです。

補助システムの本体がスリープモードに移行したため今喋っている私は本体の一部です。』


「君が……俺のスキル?」


『はい』


もしかして《神々の祝福》か?

でもあれはなんの役にも立たないゴ『ちがいます。』


『このスキルは神々から贈られた、まさしく祝福と呼ばれるべきスキルです。断じてゴミなどではありません。もしこのスキルをゴミと言ってしまうのならこの世界に神々が与えられている全てのスキルがゴミになってしまいます。そんなことは私が許しませんし、神々も許さないと思います。そもそも何故このスキルがゴミと呼ばれているのですか!?』


「あー……うん。それを説明すると長くなるんだけどいいかな?」


『はい、聞かせて下さい。』


俺はこれまでの経緯を全て話した。


裏切られたことも、


全てを失ったことも、


殺されかけたことも、


全て。



話し終わった後少し心が楽になった気がした。


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