森に捨てられた幼い兄妹、ヘンゼルとグレーテルが、お菓子の家とそこで暮らす同じ境遇の子供たちを見つけるお話。
有名な童話のアレンジ、もしくは童話を元にした創作とでもいうべき物語です。
お菓子の家に魔女がいるのではなく、その周辺で同じ境遇の子供たちがコミュニティを作っている、というストーリー。とはいえ、やはり単純にハッピーエンドとはいかないところが魅力的でした。童話がその裏に孕んだ残酷性のようなものを、より鋭く練り上げたかのようなお話の筋。
おそらく本作の主人公は妹のグレーテルだと思うのですけれど、でもひとりでほぼすべての見せ場を持って行ってしまう、このアレンジの極端さがすごい。こんなに強いキャラクターでありながら(あるいは、だからこそ)、でも彼女の内心は明確には示されず、そこが想像の余地になっているところが楽しいです。
例えば本作のヘーゼル、わりとヘタレになっている彼に対して、繰り返し念押しされる「二人きりで生きていこうね」という約束。この絶妙なヤンデレ感。きっと自分が生きていくだけならひとりで全部できてしまうので、無能でもいいから(むしろ好都合)決して裏切らない存在を求めるかのような……といってはさすがに極端すぎるというか穿ちすぎなのですけれど、でもそんな読み方もできちゃうところが楽しいお話でした。いつかこのお兄ちゃんが勘違いして両親と同じ側の生き物になって、妹から急速に興味を失くされる未来が見たい!