第37話
「おかえりなさい、ツカサお兄様!」
「今日もご苦労様でした」
俺はとりあえず今日もゴミ山で魔法院に関する情報を探っていた。ある程度興味深い情報も得られたが、時間も時間であるためいったん帰還することにした。そんな俺を、先に戻っていたテルナとユキさんが出迎えてくれる。
しかしそこにはまだ、ミリアナの姿がなかった。
「ただいま。あれ?ミリアナはまだ帰ってないの?」
「そうなんです、お姉ちゃんまだ帰ってきてないんですよ…」
ミリアナにはなかなか厄介な仕事を託してしまったから、遅くまで働かせてしまっていることにやや罪悪感を感じてしまう。
そんな時、ユキさんがどこか楽しそうに口を開いた。
「聞いてくださいなツカサさん!お二人のお帰りが遅いものだから、テルナさんったら二人が一緒にどこかに泊まりに」
「うわあああああ!!!!!あああああああ!!!!」
ユキさんの言葉をテルナが大声でかき消す。確か前にもこんなことがあったような…前回の時と同じく、顔を真っ赤にしているテルナとそれを楽しそうにみているユキさん。そして相変わらずまったく意味が理解できない俺。今度こそどういう意味か二人に聞いてやろうと思ったその時、話題の人物が帰還した。
「たっだいまあああつかれたああああああ」
まさにヘトヘトという言葉が似あう様子でミリアナが帰還し、ようやくこの場に全員がそろった。
俺たちはとりあえず一息ついたのち、皆で机に向かい情報共有を図る。はじめにミリアナがその口を開いて説明を始めたのだが、その信じられない内容に皆驚愕した。
「そ、それは本当か!?ミリアナ!?」
「本当も本当よ!私だって信じられないんだから!」
ミリアナには例の記事を書いた記者に当たってもらうよう頼んでいたんだが、彼女はさっそく記者への接触に成功して話を聞くことに成功したらしい。
その人物によると、なんとあの記事の内容は事実上魔法院の人間により作られたものだそうだ。しかもその魔法院の人間というのが、なんと俺たちもよく知る例の魔法オタクであるという。そしてその記者は魔法オタクの言ったことをそのまま記事にした。つまり魔法オタクは、あれが魔水晶ではなく新種の鉱石だと思っていたということになる。…そこから導き出されるのは…
「キールはその魔法オタクに、魔水晶の話はしなかったんだろう。でもキールの口ぶりにどこか怪しさを感じたから、話したことのすべてを記者に流したんじゃないだろうか?」
どうしてそこまでしたのかは、本人に聞いてみないとわからないけど…
「それじゃあ、あの人は私たちの味方かもしれないってことですか!?」
うれしそうにそう言うテルナに、一つの疑問を投げるミリアナ。
「だったら、なんで二人が話しかけた時に逃げだしちゃったのよ?」
そこだよなぁ。俺たちに協力してくれるなら、別に逃げ出す必要なんて…ん?…ちょっと待てよ…?
「…なぁテルナ、あいつ俺たちがキールの名前を出したとたんに転移で逃げたよな…?」
「はい!間違いないです!」
それなら、もしかしたら…
「俺たちが、キールの手下とでも勘違いしたんじゃないか?情報を記者に流すくらいなんだから、きっとキールの事をを信用していないどころか警戒していたっておかしくはない…そんな時に、いきなりキールの名を俺たちが口にしたから…」
「なるほどね…それでびびちゃって逃げちゃったってわけね…」
もし彼が味方になってくれるなら、これ以上頼もしいことはない。
「…それで、ツカサのほうは何か収穫あったわけ?」
よくぞ聞いてくれた。俺もミリアナに負けずとも劣らないほどの収穫を持ち帰ったのだ。俺は得意気に、三人に説明を始めるのだった。
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