第34話
「魔法院…魔法院…」
魔法に関してとにかく無知であることを悟った俺は、早速いつものゴミ山で魔法書なるものをさがしていた。あの魔法オタクが前に使った転移はもちろん、可能ならば魔法院がどういった組織であるのか、そこまで徹底的に調べる必要がある。幸い鉱石の時と同じく、魔法に関する王国民の関心は高いようで、魔法に関するいろいろな本が発見できた。きっとあの時、テルナが転移魔法であるとすぐに見抜けたことも、それが理由であろう。
俺はさっそく、魔法の基礎となるであろう書物を発見し、内容に目を通す。
「どれどれ…『魔法の発動には、エネルギー源となる魔水晶が必要となる。十分なエネルギーを有した魔水晶からのエネルギー供給をもとに、唱えた魔法が現出する』、ねぇ…」
どうやら魔法は、どこでもタダで使えるというわけでもなさそうだ。…そういえばあの魔法オタク、転移する時にわざわざ出してた右手をポケットに入れて叫んでたな…あの時奴が握っていたのが、魔水晶…なのか?
「『魔法の扱いには、一般的に相当な習練が必要とされる。しかし親族に魔法を扱える者がいたり、幼き頃より魔水晶に接してきた者はこの限りではないとされる。』」
…なんだ?魔法を扱える力ってのは遺伝するのか?ただ少なくとも、普通の人間が会得するには相当な習練が必要という事は分かった。
「他には、なにか…」
一旦その本を置き、次の本を手に取る。俺が次に手に取ったのは、その魔水晶について書かれた本だ。その本を開いて、記載されている魔水晶のイラストに順に目をやっていた時、あるページで違和感を覚える。
「…ん?これ、どっかで見たような…!?」
この特徴的な形に色、記載されている形状や性質…こ、こいつは…!?
「間違いない!こいつはユキさんたちが発見したって言ってた新種の鉱石!」
ま、まてよ…という事は、あれは鉱石じゃなく魔水晶だったという事になる…通りで、鉱石の資料をどれだけ探しても見つからなかったわけだ…
ユキさんの夫は鉱石商人、そして鉱石と魔水晶は全くの別物…それでユキさんたち夫婦は、これが魔水晶ではなく新種の鉱石だと勘違いをしたのか…
それならば市場価値がつかなかったことも納得だ。魔水晶は一般にかなり高価で、購入するには相応の時間がかかるほどの品だ…しかしそれがまさか、こんな一般の鉱石商に並べられているとは、誰も思わないだろう…だが、それを見抜いた者が一人いた…
「キールめ…」
…王国民の生活を死守することが民生局員の使命であるなら、ユキさんたちが持つ魔水晶には並々ならぬ価値があるという事をきちんと教えてあげるべきだったはずだ。しかし奴はそれに気づいていながら、わざと二人にそのことを話さず、あろう事かその情報を中央に流し、それらを二人から騙し取る手配をしたわけだ。
「あの野郎…」
体の奥底から込み上げる怒りを何とか抑えながら、俺はその後も情報あさりを続けた。
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