第32話

「二人とも、遅くまでお疲れ様!」


 前回の時とは反対に、今日は俺とユキさんが小屋にて二人の帰りを待っていた。


「ただいまもどりましたぁ!」


「あちこち動き回って、もうへとへとよぉ…」


 ミリアナはかなり疲労している様子だが、テルナは対照的にぴんぴんしているようだ。これが鍛えている者とそうでない者の違いなんだろうか…

 と思っていたら、ミリアナが不思議な言葉を口にする。


「まったく、テルナったらすごくはりきっちゃって…そんなにツカサに褒めら」


「うわあ!!うわああああ!!」


 突然顔を真っ赤にして、大声でミリアナの言葉を遮るテルナ。俺は全くその意味が分からず、頭上にはてなマークを浮かべる。


「???」


「と、とにかく!!その事はもういいですから!!」


 テルナはそう言って無理やり話を終わらせ、強引に俺とミリアナの体をつかんで小屋の奥へと連行していく。そんな俺たちの姿を、楽しそうに微笑みながら見守るユキさんであった。


「それで、あの後キールはどこに行ったんだ?」


 少しの休憩をはさみ、俺はさっそく本題を二人に持ち掛ける。


「ふふん!聞いたら驚きますよ!!」


「そうよ!私たちすごい情報掴んじゃったんだから!」


 二人はそう口にすると、両手を自身の横腹に当てて大いに得意気なポーズをする。それも二人同時に、まったく同じポーズだ。普段の性格は正反対でも、こういう所はやっぱり姉妹なんだなと思わされる。


「まぁ!それはすごいですね!!」


 そんな二人がかわいくて仕方がないのか、ユキさんまで悪乗りを始めてしまう。


「ユ、ユキさん…まだ聞いてもいないのに…」


「ふふふ。ごめんなさーい」


 …まあ、ユキさんの笑顔が見られたならならなんでもいいか。


「それで、そのすごい情報っていうのはなんなんだ?」


 俺は話を戻す。さて、二人がつかんだ情報というのはいったい何なのか…?


「キールはあの後中央本部に行って、すぐに出てきたの。…妙なお友達と一緒にね」


 妙な知り合い…まさか、噂のコザットだろうか?


「なんと、その後二人は近くのお店の中に入っていったんです!!」


 いや、それ自体は別に普通な気もするけど…

 しかし二人がこの後に続けて発した情報は、興味深いものであった。


「それでお店の人に聞いたら、あの二人はいっつも鉱石の話をしていたんだって!!」


 鉱石の話か…なら相手は、やはりコザットだろうか…?

 いろいろな考えを巡らせる俺に、ミリアナが得意気に疑問を投げてくる。


「それでそいつが何者か、すっごく気になるでしょ??」


「そりゃ気になるけど、知りようが…」


 俺がそう答えると、ミリアナは過去一番のどや顔で説明を始めた。


「あれが誰なのか近くの人たちに一日中聞き回って、なんとそいつの正体が分かったのよ!!」


 な、なんだって!?


「なんとその人、魔法院の人だったんです!!」


「!?」


 二人の知らせはなかなかに妙だ。魔法院は確か字の通り、王国内の魔法に関する秩序を統制するための組織だったはず…そんな奴と鉱石の話なんてするものか…?ただ少なくともこの時点で、その人物がコザットという線は消えた。あいつの籍はあくまで民生局であって魔法院ではない。

 …いずれにしてもそいつには、詳しく話を聞く必要があるな。


「魔法院の本部は確か、隣町にあるんだったな」


 俺のその言葉を聞いて、皆俺の考えを読み取ってくれたらしい。俺は三人に、高らかに次の作戦を告げる。


「…よし。そいつに会えるまで、交代で魔法院に張り込みだ!」

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