第30話
ヤシダとの話を終えた俺とテルナはそのまま小屋に戻り、収穫した情報を早速二人に共有した。
「へぇ!テルナってば大活躍だったんじゃない!」
「そ、そんなことないってば!」
そう言ってミリアナの言葉に謙遜するテルナ。
「いやいや、テルナはすごかったな。俺の想像以上だったよ…」
「え、えへへ…」
前に二人から聞いた話によると、亡くなった二人の父親がテルナに格闘術を教えていたらしい。…気の弱いテルナにこそ必要だと父親は考えたみたいだが、なかなかにスパルタだな…
「それにしても、キールの目的が中央への異動にあったなんて…」
理解しがたい、といった表情を浮かべるユキさん。…けれど俺には、キールの気持ちが少しだけ分かる気がする…もちろん奴のしでかしたことは到底許されるものではないが、周囲に尊敬されたい、もっと上に行って認められたいと考えるその気持ちは、誰しもが一度は考えることだろう…
だが無論、奴に同情してやるつもりなど欠片もない。自分の行ったことの落とし前は、きっちりとつけてもらう。…そういえばもう一人、容疑者が増えたんだったな。
「ちなみにユキさん、コザットという人物に聞き覚えはありませんか?」
そいつがユキさんに直接かかわっている可能性は低いだろうが、念のため彼女に確認する。…しかし俺の言葉を聞いた彼女の表情は、みるみる怒りの表情で満たされていく。
「…忘れもしません…」
その尋常ではない彼女のオーラに、息をのむ俺たち。次の瞬間彼女の口から、思ってもいなかった言葉が放たれた。
「…私たちから鉱石をだまし取った、張本人です…」
「!?」
「!?」
衝撃の事実が彼女の口から明かされた。彼女たちから鉱石をだまし取ったのは、キールの元上司で今は中央にいるという、コザットであった。
「…話が、つながってきたな…」
そうであるなら、二人が結託して一連の事件を引き起こした可能性は非常に高い。…ヤシダの奴、ちゃんと役に立つ情報をくれたみたいじゃないか。
「…あの事件以降、私たちは彼に何度も抗議をしに行ったのですが、何度訴えても『そんな約束はしていない』の一点張りで…」
彼らに受けた理不尽な話をつらそうに話す彼女に、二人はそれぞれの反応を見せる。
「そ、そんな事って…ひどすぎます…!」
「そいつら、絶対に許せないわっ!!!」
俺たちの意思は改めて固まった。まずはキールを叩き、それと同時にコザットの情報を集める。そして奴らのすべての所業を白日の下にさらし、最後には王国にすべてを告発する。
俺はユキさんの肩に手を添え、一言告げる。
「最後まで、一緒に戦わせていただきます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます