第28話
まぬけにも、あっさりと扉を開いてくれたヤシダ。もしこれがダメだったなら、テルナに無理やり扉をぶっ壊してもらう手順になっていたが、それをせずに済んで何よりだ。
…しかしまさか、あの弱弱しそうなテルナが格闘技の技術を有していたとは…どおで見張りの時にミリアナが暴れた際、容易に取り押さえられたわけか…
「お、お前確か…テルナとか言う…それにツカサ…お、お前ら一体なんで…」
いろいろとヤシダも疑問を抱えているようだが、時間も無駄にしたくないので早速本題に移る。
「ヤシダ。お前の知っていることを包み隠さずすべて話してもらおうか」
「…!」
途端、沈黙してしまうヤシダ。…質問の仕方が悪かったか…
「ヤシダ、お前とキールがつながってる事は分かってる。お前もキールも、そろいもそろってたいそうご立派な仕事をしていたらしいじゃないか」
「な、なんのことだか…」
ヤシダはあくまで白を切るつもりのようだ。俺は構わずヤシダに推察を述べる。
「ある鉱石を持つ夫婦への保護給付を、キールは独断的に不認可にした。さらに二人が提出した申請資料から、その鉱石についてのある情報を見抜いたキールは、中央民生局にそのままその情報を流した。そうだな?」
「し、知らねえって言ってるだろうが…!」
…少し息が荒くなっているようではあるものの、あくまで白を切るつもりのヤシダ。…やれやれ、やはりこの手を使わなければ口を割らないか…
「…そうか、なら残念だ」
「…」
「話してくれないのなら…王国にお前を告発する他ないな」
「!?」
目に見えて動揺するヤシダ。…目を見開き、体が震え始めている。
「今のお前はただの報告ミスという事で自宅謹慎の処分にとどまっているが、二人がお前を王国に告発したらどうなるか分かるか?」
「!?!?」
一歩一歩、着実にヤシダを追い詰めていく。
「判断ミスではなく悪意のある判断で二人の人間を殺しかけた上に、浮いた王国の金を自分の懐に入れていたなんて王国が知ったら、お前一体どうなるだろうな?」
「ちょ、ちょっと…」
そこから先は…と言った表情を浮かべるヤシダだが、俺は構わず続ける。
「そうなったらお前は局を除籍になるばかりか、更生猶予無しの永久追放間違いなしだ!」
「ま、まって!まってまってまって!!」
…少しばかり、涙目になっているヤシダ。
「…俺も残念だが、まぁお前が知らないのなら仕方がない。王国を追い出されても、元気でや」
「も、もうやめてくださいっっっ!!!分かりました!!!もう分かりましたから!!!」
「言います!!!も、もう!!全部!!知ってる事!!全部言います!!!」
ヤシダは涙声でもはや絶叫している。折れた様子のヤシダは、ようやく口を開いてくれるようだ。
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