第18話

「ユキさん、今日は遅くまで付きあわせてしまって、申し訳ありません」


 あの後も、俺たちは支局長とともに作戦会議を続け、気づけばもう夜になってしまっていた。隣町の民生局に向かうのはひとまず後日とし、今日は帰ることにした。支局長からも、数日中には話を通しておくと言われているし、それで問題はないはずだ。


「いえいえ、お気になさらないでください。むしろ、私が皆さんにお願いしている立場なのですから…」


 俺の隣を歩く彼女はそう言い、申し訳なさそうな表情を浮かべる。…直接関係ないとはいえ、民生局に足を運ぶことが彼女にとってどれだけ勇気のいることか、俺には想像もできない。…しかし彼女は、臆することなく向かって行った。彼女の覚悟は、決して生半可なものではないのだろう。


「…私も、ツカサさんと一緒に戦うと決めたのです…それに…」


 …一瞬だけ、彼女が俺の方を見たような…しかもどこか、彼女の顔が少し赤くなっているような…気のせいだろうか…?

 …このよくわからない雰囲気のまま帰るのもどこか落ち着かないので、俺は一旦、あえて話題を変えることにした。


「…二人とも、怒ってるかもしれませんね。こんな遅くなっちゃって」


 …確か、前にもこんなことがあったような…

 俺のその話に、少し笑みを浮かべるユキさん。


「っふふ。そうかもしれませんね」


 彼女は笑みを浮かべたまま、しかしどこか切なそうに続けた。


「…待っていてくれる人がいるというのは、やはり良いものですね…」


 …この世界に来て、同じことを俺も実感している。…前の世界では、俺には誰にもいなかったのだから…

 二人で何気ない会話を続けていると、いよいよ小屋の前に到着する。俺は意を決し、扉を開く。


「二人ともお帰りなさい!!」


「だ、大丈夫だった?けがとかしてないわよね…?」


 無事帰宅した俺とユキさんを、二人が迎えてくれる。


「うふふ。なんだか、娘たちに出迎えられているよう♪」


 二人のお出迎えに、どこかご機嫌な様子のユキさん。彼女のその言葉に、テルナが続く。


「私たちが娘という事は、お二人は…」


 って、なにを言ってるんだこいつは!!


「っば、ばか!!変なこと言うんじゃない!!」


 俺は反射的に、テルナに噛みつく。…しかしユキさんは、テルナの悪ノリに乗っかってしまう。


「あらまぁ、そこまで否定されると傷つきますわぁ、ツカサさん♡」


 …妙に色っぽい声で、俺に声をかけてくるユキさん。


「…ねぇツカサ、どういうことか、説明してもらおうかしらぁ…?」


「だ、だからちがっ!!!!!!!!」


 次の瞬間、ミリアナの右ブローが炸裂し、力のない俺はかわすこともできずノックアウトした。

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