第15話

「な、長居をしてしまって本当に申し訳ありません…」


 俺がここに戻ってきてから、ついさっき目を覚ましたユキさんが心底申し訳なさそうにそう言った。


「か、かえっちゃうんですか?」


 …今の俺の言葉に、なにか殺気のようなものを放つ二人…ミリアナが、俺に聞こえないほど小さな声でボソッとつぶやいた。


「な、なによ…ツカサったら年上が好みなわけなの…!?」


 ユキさんはその圧を察したのか、一段と早く帰宅の準備にかかる。…しかし俺にはどうしても気になる点があり、ユキさんに疑問を投げる。


「…でも失礼ですがユキさん、鉱石商はもうないんじゃ…」


「…」


 それもついさっき、彼女が話してくれたことだった。民生局に欺かれた上に、夫が亡くなってしまった鉱石商は、もうつぶれてしまったと…であれば、彼女に帰る場所なんてないんじゃないだろうか…そう思った俺は、彼女に一つの提案をする。


「…せめてこの件が解決するまで、ここにいては?」


彼女は俺の提案に一瞬だけ驚きの表情を浮かべたものの、すぐに元の表情に戻ってしまう。


「…いえ、これ以上皆様にご迷惑をおかけするわけには…お恥ずかしい話、皆さまへのお礼金だっていつお渡しできることになるか…」


 彼女はそう言うと俯いてしまい、暗い表情を浮かべる。…少しの間俺たちを重い沈黙が包んだが、ミリアナがそんな思い雰囲気を吹き飛ばす。


「そんなのいいから!んもう仕方ないわね!」


 ミリアナは無理やりユキさんの手を引き、室内へと連行する。


「で、でも私は…」


 それでも出ようとする彼女に、今度はテルナが抱き着いてしがみつく。


「一緒にいましょうユキさん!困ったときはお互い様じゃないですか!」


「み、みなさん…」


 俺たちの言葉に、涙を浮かべるユキさん。彼女も思いが決まったのか、俺たちの思いを受け取ってくれた。


「わ、私にできることがあったら、何でも言ってください!!」


 力強くそう言い放つユキさんに、ミリアナが洗礼の言葉を浴びせる。


「なんでも?なんでもするの??何でもするって言ったわよね??」


「え、?え、???」


 両目をぎらつかせながら、ユキさんに一歩一歩近づくミリアナ。…俺は何か嫌な予感がしたので、ひとまずこの場を退散する…

 …小屋の中で何が行われているのか、外で涼んでいる俺にはさっぱり分からないものの、さっきから妙な声がずーっと聞こえてくる…



「…女同士なんだからいいでしょ?見せなさいってば…!」


「だめです!ダメですってばぁ!」


「な、何を食べたらこんなに大きくなれるの…お姉ちゃんよりも大きい…」


「ダ、ダメですって!!」



「…さて、散歩でもしてくるか…」

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