第14話

 ユキさんは疲れてしまったのか、そのままテルナが膝枕をして寝かしつけている。…どっちの立場もちょっとだけうらやましい気持ちはあるものの、状況が状況なので考えないようにする。しばらくの無言の後、最初に口を開いたのはミリアナだった。


「…ユキさんをだました民生局のやつら…絶対許せない…」


 ミリアナの瞳には、怒りの炎が燃え盛っていた。


「…二人とも、ユキさんの事を頼めるか?」


 俺のその言葉に、キョトンとする二人。


「頼めるかって…ツカサはどこ行くのよ?」


 ミリアナの疑問に、笑顔で答える俺。


「決まってるだろっ!困ったときのいつものところだよっ!」


 俺は二人にそう告げ、小屋を飛び出す。目指すはもちろん、ゴミ山だ。確か前に見た時、新種の鉱石がどうのこうのという記事を見た気がするんだけど…

 

「うわぁ…なんか量が増えてないか…?」


 とは言いつつも、どこか嬉しい気持ちもある。情報が多いに越したことはないからだ。俺はさっそく、手当たり次第に心当たりのある個所を探してく。それと同時に、今回の件に関係のありそうな制度やシステム、金の流れなどがつかめそうな情報も探す。…ここに来る前の俺なら絶対にできなかった、あこがれのマルチタスクだ。

 探索を始めて数時間、早速お目当ての記事を見つけるのに成功した。


「これだこれだ!…どれどれ…」


 『王国始まって以来の偉業!民生局局員が新種の鉱石の発見に成功!』…ん?これだけか?思っていたよりも内容の薄い記事に、やや落胆を覚える。


「これだけじゃない…絶対に何かあるはず…」


 改めて、探索を開始する。人が一人亡くなっているほどの出来事だ…絶対になにか裏があるはず…

 しかししばらく探してみたものの、結局民生局と鉱石を関係づけるようなものは見つからなかった。


「うーん…記事にはなっていないのか…」


 となれば、逆算的に考えるべきだろうか。俺は鉱石の方を調べてみることにする。幸いなことに、鉱石に関しては皆関心が強いのか、それらしい本がたくさんあった。

…しかしいくら探しても、こちらもなぜか情報が得られない。これだけの資料があるにも関わらず、だ。確かユキさんは、新種の鉱石の名前をコール鉱石と言っていた…しかしどの最新の鉱石の資料集にも、それらしい記載がない。…コール鉱石よりも後に発見された鉱石の記載はあるのに、コール鉱石の記載がないのだ。


「…ちょっとまてよ、確か…!」


 俺はついさっき目にした記事に視線を戻す…

 …思った通りだ。『王国始まって以来の偉業!民生局局員が新種の鉱石の発見に成功!』…ここにも、コール鉱石の名前は一つも出てきていない。ユキさんの夫が先に発見しているのだから、まだ名前が付けられていないなんて可能性は低い。…つまりこの鉱石の詳しい存在は、意図的に隠されているのではないだろうか…


「…会ってみるしかないな、あいつに…」

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