第12話

「うーん、なにかいいものはないかなぁ…」


 俺は今日も今日とて、ゴミ山に足を運んでいる。というのも、頭の回転が劇的に良くなったおかげで、知識の吸収効率が格段に上がったのだ。無数に捨てられていた本の知識を、順調に着々と吸収できている。


「…鉱石かぁ。この世界にも、そういうのがあるみたいだな…」


 今手に取ったこの本に記載されているのは、鉱石に関する事のようだ。なになに…鉱石の市場価値は時間とともに常に変動し、その魔法学的、及び燃料的需要により…ってこれ、まるで株券みたいだ…

 その後もいろいろな書物に目を通していると、ある本に視線を持っていかれる。


「!!!!!!!!!!!!!」


 い、色白のめちゃ巨乳なお姉さんのイラスト集だ…その表紙のお姉さんは清楚感漂うポニーテールで、どこか気持ちを高ぶらせてくれる…俺は瞬時にそれをつかんで周囲を見回す。…他にも何人かゴミをあさりに来ている人はいるようだが、誰にも見られていないな…それを確認した俺は瞬時に大型ごみの陰に隠れ、固唾をのんでページを開く…


「ど、どれどれ」バゴッツ!!!!!「いだっ!!!!!!!」


 とっさに後ろを確認すると、顔を赤くして怒りの表情を浮かべるミリアナと、冷たい視線を送ってくるテルナの姿が…


「い、いやこれはたまたま」


 俺のそんな言葉は無視され、ミリアナの低く凍り付くような声が発される。


「…最近毎日遅くまで熱心に通ってるみたいだから心配してきてみれば…あんたってやつはもう!!!!!!!!」


「だ、だからちがあああああ!!!!!!!」


 そこで俺の意識は途切れた。


「…」


 意識が復活したときに目に入ったのは、召喚陣で呼び出されたときに見た時と同じ天井…それに頭にはなにか柔らかい感覚…


「お、起きた…?」


 目の前に、心配そうに見つめるミリアナの顔が飛び込んでくる。


「ご、ごめん…ちょっとやりすぎたわ…」


 …視線の角度から考えるに、俺は彼女に膝枕されてるようだ。こんな感覚は生まれて初めてなので、もうなんでも許せる気分になる。…ん?ミリアナの髪型が少し変わっているような…気のせいだろうか…?

 …その時、少し離れた位置から俺たちを見る視線を感じる…後ろから見つめるテルナは、さっきと変わらず冷たいジト目で俺を見る。


「…もぅ、お姉ちゃんったら…私だってしたかったのに…」


 …テルナが小さくささやく声が聞こえたような気がした…おそらくまだ根に持っているんだろうか…頭の回転はよくなっているはずなのに、こういう時の言い訳は何も出てこない…ああ、これに関してはもとから出てこない体質だから、時間が短縮されたところで変化はないという事か…

 俺はその柔らかい感覚に身を任せ、再び意識を手放した。

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