第7話

「もう!どこ行ってたのよ!心配したじゃないの!」


 帰宅早々、ミリアナに叱られてしまう。女の子にここまで声をかけてもらえるなんて、今までにあっただろうか…


「心配してくれてたのか?」


 俺の言葉に、彼女は顔を真っ赤にしてそっけなく言葉を返す。


「!、べ、別にっ」


 そんなミリアナの横から、テルナがニコニコとした表情を浮かべながら現れる。


「お姉ちゃんったらね、ツカサに何かあったらどうしよう、どうしようってずっと言って」バシッ!


「あんたは余計な事言わなくていいの!」


 ミリアナの手刀により、テルナの言葉は中断される。続きの言葉が気になったんだけど、諦めるしかないようだ…


「それで、どこ行ってたのよ!」


 腕を組み、仁王立ちで構えるミリアナ。…昨日の包容力にあふれる彼女は一体どこへ…


「ゴミ山で、情報収集をしてたんだよ。結構収穫あったぜ?」


 俺は得意気に、昨日の夜にゴミ山で知った知識を二人にひけらかした。特に政治の話を中心に。二人はおとなしく最後まで聞いてはくれたものの、俺の話を聞き終わった二人は、心底微妙な顔をしていた。


「あ、あれ?俺何か間違ったこと言っちゃった?」


 ミリアナは深いため息をつき、俺の言葉に返事をする。


「あのねぇ…そんなことはこの国の子供でも知ってる事よ…」


 後ろでテルナも、しぶしぶとうなずく。


「え!?そ、そうなの!?」


 …得意気に語っていた自分が、無性に恥ずかしくなる。


「でもでも、誰でも知っていることを楽しそうに話すツカサお兄さんの姿、素敵でしたよ♪」


 …本心からそう思っているのか、フォローのつもりなのか…いずれにしても、穴があったら入りたい気分だった…


「とにかく、お腹すいたでしょ?ご飯作ってあるから、一緒に食べましょう」


 ミリアナにそう手招きされ、俺はそのまま席に着く。机の上に並べられた料理を見て、俺にはある疑問が浮かんだ。


「あれ?いつの間に新しい食材を買ってきたの?」


 俺の疑問に、疑問顔で答えるミリアナ。


「?、新しく買ったりなんてしてないってば」


 お、おかしいな…昨日は見てないような具材がたくさん張っているような…

 そんな俺の疑問を察してくれたのか、テルナが種明かしをしてくれる。


「お姉ちゃんは、すっごく料理が上手なんだよ!同じ具材からでも、いっぱい料理が作れちゃうの!」


「な、なるほど、そうだったのか」


 俺たちの言葉が聞こえたのか、ミリアナは得意気な表情を浮かべる。


「ふふん♪私にかかればこんなの簡単よ♪」


 …きっとこの料理技術は、満足に食材が手に入れられない中で、生き抜くためにミリアナが会得したものなのだろう。本当に彼女の強さには、頭が上がらない。


「さあ、頂きましょう」


 3人で手を合わせ、食事を始める。やはり彼女の作る料理は、絶品であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る