第5話

「はぐむしゃばぐぎごばどじゅる!!!!」


「むしゃぎがしゃばりごむしゅば!!!!!」


 すさまじい勢いで、食事を進める二人。相当空腹だっただろうに、きちんといただきますを言って食べ始めたあたり、本当に良い子たちなんだなと実感させられる。


「お肉だぁ…おいしぃよぅ…」


「本当に…もう一生食べられないと思ってたからぁ…」


 喉さえ詰まらせかねないそのスピードに、思わず俺は二人に言葉をかける。


「だ、大丈夫だよ二人とも。結構な量を買ってきたから、ゆっくり食べていいからね」


 二人は一旦手を止め、純真な表情で俺の目を見る。


「ありがとう!お兄さん!」


「い、一応お礼は言っておいてあげるっ!」


 そう告げると、相変わらず再び猛烈なスピードでた食事に戻る。…なんだかその二人の姿が、たまらなく愛おしく感じられた。…俺って今まで、誰かにここまで感謝されたことが一度でもあったっけ…

 自分の世界に入って考えにふけっていると、突然二人の手が止まる。


「…どうしたのお兄さん?どこか痛いの…?」


 不安そうに、そう声をかけてくるテルナ。


「な、なんで急に泣いてんのよ…」


 口調こそ強いものの、心配してくれている気持ちが伝わってくるミリアナ。


「…!?」


 自分でも全く気付いていなかった。俺はいきなり、涙を流していた…


「…な、なんだかすごくうれしくて…俺って今まで、誰かに感謝されたことなんてなかったから…結局俺って、役立たずだから…さ…」


 思いを正直に、口にした。二人の前では、どうしてだか正直になれた。

 二人は俺の言葉を聞いて、互いに顔を見合わせ、笑いながら言葉をかけてくれた。


「ツカサお兄さん、私たちはこんなにおいしいごはん、今まで食べたことがありません!さすがにお母さんのごはんほどではないですけどね♪」


「テルナ…」


「ツカサはいきなり私たちに呼び出されたのに、文句の一つも言うどころか、右も左もわからないこの異世界でいきなりこれだけの仕事をしたのよ!ツカサのどこが役立たずなのよ!」


「ミリアナ…」


 二人の言葉に、ますます涙があふれそうになる。ミリアナは体を乗り出して俺の手を取り、俺の目を見ながら言った。


「ツカサの事を役立たずだなんて言う奴がいたら、私がけり倒してやるわ!!」


「うんうん!!」


 二人の気持ちが、冷え切っていた俺の心を温めてくれる。俺は心の底から、二人に感謝の言葉を告げる。


「ありがとう、二人とも。俺、二人のために頑張るからね!」


 しかし、そんな俺の言葉にどこか不服そうな二人。


「うーん…それじゃなんだか、主人と使用人みたいで嫌ね…」


 ミリアナの言葉に、テルナが続ける。


「家族ですよ!私たち三人は!一緒にご飯を食べたんだから、もう家族です!」


 家族…か。俺とは無縁だとずっと思っていたものが、突然目の前に実現した。俺はなんだかそれが無性にうれしくて、ますます涙目になってしまう。


「ま、また泣いて…もう、仕方がないんだから…」


「泣かなくても大丈夫ですよ、ツカサお兄さん」


 二人の手のぬくもりに包まれながら、俺は改めてこの二人を幸せにすると、誓った。

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