第4話
「この辺りに、ゴミ捨て場はないか?できるだけ多くのものが捨てられてるところが理想だ」
「…」
「…」
俺の言葉に、すさまじいジト目を送り付けてくる二人。
「…大きいゴミ捨て場はあるけど、食べ物なんてないよー」
「そんなの、みんなが考えることだもん…」
乗り気じゃない二人の言葉に、俺は笑って返事をする。
「欲しいのは食べ物じゃない。情報だよ!」
「?」
「?」
分かりやすく、頭上にはてなマークを浮かべる二人。
「とにかく、場所を教えてくれっ!」
二人は体力が限界だろうから、俺一人で向かうことにした。二人から正確な場所を聞き出し、急ぎ目的の場所を目指す。
「すっげぇな、こりゃ…」
小屋は小規模の森の中に建てられていて、そこから少し走ると街に出た。世界史の授業で見たような、何百年か前の外国のような光景がそこには広がっていた。
しかし、景色に見とれている場合ではない。俺は急ぎ、ゴミ捨て場を目指す。
「お、あれかっ!」
二人が言っていた通り、遠目に見てもかなりの量が捨てられている。そして二人が言っていた通り、食料や金目のものは全くなさそうだ。
「よし、よしよしよし♪」
色々な考えが脳裏に浮かんできて、なんだか楽しささえ感じられてくる。元から頭の回転が速い人間は、こういう世界を体感していたのだろうか。
「さて、と…」
ゴミ捨て場に到着し、付近のものに目をやる。まず初めに目に入ったのは、無駄にばかでかい肖像画だ。
「…誰が買うんだよ、こんなもん…」
…いや、断言できる。こんなものを買うやつは、あの世界だろうとこの世界だろうと一人もいない。…つまりこの肖像画に描かれているこの男こそが描かせたものだろう。この肖像画の規模から考えて、この男はかなりの金持ちか、かなりの権力者…っと、こんなことを考えても仕方がないな。欲しい情報はこんなものじゃない。
しかし、しばらくの時間物色を続けていると、不意に怪しげな男二人組に声をかけられた。
「お前、そこで何をしてる」
「ここは俺たちの領域だぜ、とっとと出ていきな」
…その見てくれから推測するに、ゴミ捨て場をあさって生計を立てている連中だろう。その証拠に、彼らが大事そうに背に担いでいるかごの中には、きらびやかな服や箱などが回収されている。
…どうやら俺は、かなりついているようだ。俺はあえて高圧的に二人に言葉を投げる。
「お前たち、どうする?回収したものを素直に置いていったら、今日のところは見逃してやってもいいぜ?」
「はぁ?てめえ何言って…」
俺はそう言うと同時に、ついさっき拾ったあるコートに身を包む。それを見た途端、二人の表情が一変する。
「ま、まずいっ!こいつ憲兵だ!!」
「く、くっそっ…わ、分かった!!全部おいてく!!おいてく!!」
二人は大事に背負っていたかごごと放り投げ、全速力で立ち去って行った。
「…へぇ、こりゃ憲兵の服なのか」
もちろん俺は憲兵なんかじゃない。この服はついさっき見た、肖像画の男が来ていたものだ。あれだけでっかい絵に描かれている人物が来ている服なのだから、きっと何かあると踏んで回収していた。この服は肖像画の下敷きの形で落ちていたから、これまで雨風をしのげて、ここまで良好な状態を維持できたのだろう。
「さて、と…」
金目の物を回収しに来たわけじゃないんだが、せっかく奴らが置いて行ってくれたものだ。ありがたく頂戴することにしよう。さらにありがたいことに奴ら、これらの換金先まで記した紙まで置いて行ってくれているようだ。
「…ひとまずは、あいつらの腹を満たしてやるか…」
俺はさっそくそれらを元手に、ある程度の食料を手に入れ、二人の待つ小屋へと戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます