第145話 大都市総力戦
「敵襲だぁぁぁあああ!!」
店を出ようとしたとき、人々の悲鳴と一緒に聞こえたのは危険を知らせる兵士の声。
セトとサティスが飛び出してみると、遥か向こう側の地区が惨劇に見舞われていた。
「なんだあれ! 魔物か!?」
「そんな、ありえません! この街の守りは完璧なはず!」
「いや、完璧じゃないんだなぁこれが」
見上げるとそこには人影が。
セトは怪訝な表情をするが、サティスはその姿に驚愕を隠せなかった。
「アナタは……イシス!」
「アハッ! やっぱりいたサティス姉さん、会えて嬉しいよ」
「誰だアンタ……」
「おいガキ、オイラは今サティス姉さんと話をしてるんだ。邪魔しないでくれるか?」
「……」
セトが黙って魔剣を引く抜く。
それが気に入らなかったのかイシスも魔力をためようとした。
「待ってくださいセト。アナタは街へ行って人々を守ってください」
「サティス、でも!」
「ここは私に任せて。あの邪妖精は直々に痛めつけます」
「……わかった。でも無理だけはしないでくれ」
「えぇアナタも」
イシスは気に入らなさそうにするも場所を変えるとし、遠くへ離れていく。
それを追いかけるサティスと、街の方へと駆け抜けていくセト。
「きゃあああ!!」
「うわぁあああ!! 助けてくれぇぇぇええ!!」
逃げ惑う人々をかき分けながら、セトは惨劇の渦中へと突き進む。
魔物たちがセトに気づくと雄叫びを上げて襲いかかった。
「奇襲でやってきた、というよりも死ににきたって感じだな」
殺気立ち、鬼気迫る表情の魔物たちに、セトは俊敏な剣捌きで応じる。
すばしっこい動きで飛んだり跳ねたりしながらも、正確に急所に斬撃を叩きこんだ。
「ウガァァアアア!!」
「うわっとっと!」
数の多さに押しきられそうになるも、魔剣解放によって道を切り開いていく。
「苦戦中か? 手を貸すぞ!!」
「オシリス!」
空からの声。
オシリスの魔剣『
舞い降りてきた彼と互いに背中を守りながらさらに迫ってくる魔物たちを掃滅していく。
「ちょっとぉおおお!! セトぉおおおおお!!」
「今度はなんだ? げ、グラビス……!」
「おい、あれお前の仲間か? バカ! さらに数を増やすやつがあるかっ!」
「あはは~そんなこといいっこなしなしぃ! ね、困ったときはお互い様でしょ? あ、そっちの魔剣使いさんは新顔? ども~」
「……こういう感じの友達なんだ」
「まったく……。いいか、互いの背中を守れ! そこの女のせいで増えてしまったからな……増えてしまったからなッ!!」
「嫌みかッ!!」
「あーだこーだ言ってる場合じゃないぞ。グラビスも気合い入れてくれ」
「わかってるわよ。任せんしゃい!」
近接のセト、中距離のグラビス、遠距離のオシリス。
それぞれの斬撃が魔物を駆逐していく中、大型の魔物たちが軍団を引き連れ四方から現れる。
「……あれはアタシのせいじゃないからね?」
「わかってる。オシリス、もうちょっとだけ本気だせるか?」
「言われるまでもなく」
「でもちょっと数多いよね。……セトならできるでしょ?」
「あ~……ま、頑張るよ」
戦闘で期待されるとこたえたくなる性分。
リヴァイアサンとテュポンを総員させて一気に決めるか。
(いや、テュポンはダメだ。街に被害が出かねない。……よし、ここはリヴァイアサンを使うか!)
3人とも覚悟を決めて進もうとしたときだった。
陽光が阻まれ影ができる。
「……あれは!」
この大都会でセトがもっとも苦手な人物。
彼女は家々の屋根を駆け抜け、神速の居合で周囲にいる魔物を斬り裂き轟音とともに着地した。
「で、デアドラ……フラーテル」
「久し振りですわね。セト……と、爆乳女に……アナタは……ッ!」
「フラーテル家の娘か。大きくなったものだ」
「あぁムカつく……魔物が攻めてきたと思ったら、魔剣使いにまた出会うだなんて……ッ」
「デアドラ、協力してくれ。軍団の制圧にはアンタの力が……」
「義弟になりますか?」
「嫌だ」
「……チッ」
「ハッハッハッハッ! 思い込みの激しさだけは相変わらずだな!」
「うるさい! アナタもいつかぶっ殺してやるから!!」
「喧嘩してる場合かっての! 気合い入れないと死ぬわよ」
「あぁ、皆身体は十分温まってるだろう?」
東西南北。
4人はそれぞれの方向に向きながら、迫りくる魔物に挑む。
オシリスの空中飛行と斬光。
グラビスの変幻自在の斬撃。
デアドラの神速居合と斬牢。
セトの単純火力による破壊。
それぞれの魔剣と個性の力が魔物たちを討伐していく。
セトたちの猛進と猛攻に魔物は手も足も出ない状況まで追い込まれた。
こうなれば流れは人類側にある。
「いいぞ。このまま一気に押し返せ!!」
「魔剣使いが我々の味方だ!!」
「前へ、前へぇえー!!」
兵士たちの士気が上がって彼らも次々と撃破していく。
魔剣4人衆の活躍で誰もが勝機を見出していた。
グラビスは手に入れた魔剣でオシリスに引けも取らない立体機動を見せながら魔物を倒していく。
セトは気を取り直して黄金のガントレット『リヴァイアサン』でブーストをかけながら瞬時に多数の魔物を爆散させていった。
デアドラの斬撃のリプレイによってあとから斬り裂かれた魔物たちの血飛沫を背後に、続けざまの神速居合が残りを刈り取っていく。
「ふ……頼もしい後輩たちだ。俺も負けてはいられん!!」
奇襲部隊の優勢もつかの間、勢いが崩れるのはあまりにも早かった。
そして魔物が倒されていく中、イシスを追いかけたサティスは彼と対峙する。
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