初夢悪夢どこへも行けぬ。


 年明けの雰囲気がなんでか好きだ。

 未来に希望も何も無い自分にとって年末も年始も関わりは無いと言って良い。

 それでも紅白歌合戦をチラ見し、好きでもない餅を食い、初夢をメモしたりと、なんだかんだで満喫している。

 今年はたばこの初夢を見た。一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭である。

 と言っても悪夢だったが。

 夢の内容は全体的に薄暗い。大体が夜道で、昼間であってもいいことはなかった。

 絶対に帰れない帰路。空は星も月も見えないが透き通るような夜空だった。あまり馴染みの無い住宅街で、最近通った坂道に似ていた。前回は登りだったが、今回は下りである。徘徊する犬に見つかれば即食い殺され、ふとスタート地点に戻されているループもの。というよりそれはホラーゲームのようで、毛色は違うがGOHOMEを彷彿とさせた。これは記憶違いだろうが、ホラーゲーム実況者のガッチマン氏が解説していたように思う。

 それと赤い仏像だ。寺で開かれた古本市。芥川龍之介の幟が立てられ、出店に座っていたのは千鳥のノブである。そこにある仏像。いくつかに紛れ、一体真っ赤な仏像が紛れているのだ。自然と目線が行き、なんとなく見つめていれば、それは揺らめいている。赤い仏像がゆらゆら、よく見なければわからない程度に揺れていた。近づいてみればなんのことはない。赤タイツを着た人間だった。

 後はあまり覚えていない。

 タランチュラを触って手に毒針が刺さり恐ろしく腫れ上がっていたり、知らない年下五人と風呂に入っていたり(女三が洗い場、男二と自分が風呂桶)、なにがしかの式典で年下の中でひとり一つ上の自分が気まずそうにしていたり、そこにカメラマンとしてはじめしゃちょーがきていたり、小学生の頃の女同級生に道端で写真を撮っているところに声をかけられたり、母親にたばこをねだられ一本あげたところ一吸いで捨てようとしたので貧乏根性で残りを請け負い口臭にむせたり、全体的に良い印象が無い。

 とはいえ、夢は夢だ。

 しかし小説を書こうとすると何も浮かばないが、夢だと割と面白いことを考えていると思う。なぜなのか。それもまた以下略。

 去年は行かなかった初詣だが、年明け二日が過ぎてもなお今年もまだ行っていない。

 明日辺りにいこうかしら。

 財布の中には五円玉だけが鎮座ましましている。これが増えてくれないものか。

 というよりも、なにか出来ることを探さなくてはいけない。

 まずは仕事である。

 高卒と同時に入った仕事は即効で辞め、無職期間はゆうに半年を越し、ようやく重い腰を上げ郵便の配達バイトの面接を受けるも落ち、どうにか作家業が形にならないかと何もせずにぼんやりしているような人間だ。

 別に芸術を求めているわけでもなし、なにがしかの仕事をしたいとは思っているものの条件が多くここいらでは見つからないのである。多いとは言っても、要はあまり長時間ではなく週四以下で働けてなるたけ近い場所くらいのものではあるのだが、ここいらだとあまりない。田舎を舐めるな糞ニート、といった具合だ。

 とはいえ仕事が無い〃言っていても仕方がないので、バイトを諦めるのなら他にするべきことがあろう。とはならないのがニートたる所以である。

 あまり余った時間を惰眠につぎ込み、買いためた書物にインターネットさえあれば暇は幾らでもつぶせる。

 もはやダメ人間と呼ぶ他なく、かと言いまともになれる糸口はどこにもない。

 あとは腐っていくばかり。

 酒とたばこで脳を腐らせ、ぐずぐずの肉の塊になるばかり。

 なにがしか物語を描きたいのだが、意外とこれは難しい。わしの教養と頭ではどうにもならんと嘆いていたところ。これでは五月の新人賞に間に合わんではないか。とはもはやならない。約束した友人未満さえ鬱陶しく遠ざけ連絡がない。解けた約束に安堵するばかりであれば、友情などどこに生まれようものか。しかして孤独の沼へと浸かりゆく。肩はもはや見えず、あご先に泥の水面を感じている。

 金さえあれば、女も手に入るらしい。どうだろうか。

 人間性で手に入るものなど私には怠惰以外なにもありはしないのだ。

 友情も愛情も、今や架空のものでしかない。

 寂しいものだ。

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幼稚さを自覚し、苦悩し、努力を怠った。 白木兎 @hakumizuku

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