第191話 仕事の割り振り

 そして次の日。

 普通に授業を受けてその放課後、ロニーと共に従業員寮に向かっている。


 昨日公爵家の夕食時にも魔物の森のことが話題になったけど、平民には来週の頭、火の日に公布するらしい。

 とりあえず貴族の反応は完全に二分しているみたいだ。重く受け止めて戦力を増やしたり、魔物の森に私兵を貸そうと言ってくれる人もいるらしいけど、全く信じていない人もやはりいるそうだ。

 これは今までと変わってない。やっぱり貴族に伝えるだけじゃ認識の変化は起きないんだろう。平民に公布してどうなるかだな。



 そんなことを考えつつロニーと共に馬車に揺られていたら、すぐ寮に着いた。ずっと悩んでても仕方ないし、とりあえず切り替えないとだな。日常も普通に過ぎていくんだから。


「ロニー、いつも通りで行こうか。皆も数日後には知ることになるし、わざわざ不安にさせることもないよ」

「そうだよね……。うん、そうするよ」


 そうして二人で笑顔が不自然ではないか確認して、馬車から降りた。馬車を降りると皆が出迎えに来てくれている。


「皆、出迎えありがとう」


 そうして皆と簡単に挨拶をして、食堂に移動した。


「皆、ここでの生活には慣れた?」

「はい! とても快適な生活でご飯もたくさんいただけて、本当にありがとうございます」


 キアラがそう言って頭を下げると、それに伴って皆が一斉に頭を下げた。


「そんなにかしこまらなくても良いよ。皆にはこれからたくさん働いてもらうからね」


 俺がそう少しだけ軽い口調で言うと、皆は力強く頷いてくれた。


「もちろんです。精一杯頑張らせていただきます!」

「頼りにしてる。じゃあ、今日はこれからの予定を決めたいんだけどいいかな?」

「はい!」

「ありがとう。まずお店なんだけど、お店は次の春の初めに開店することになる。だから、それまでは皆に仕事を覚えてもらったり、あとは屋台での仕事をしてほしいんだ」


 屋台の仕事は客商売の経験ということで、皆でローテーションで良いと思うんだよね。そしてそれ以外の人は教育って感じで回していけば。

 その仕組みだと、春にお店が開くことになったら屋台で働いてくれる人をさらに雇わないとなんだけど、まあそれは仕方がない。

 とにかく今は、皆に練習も兼ねてやってもらうことが大切だ。


「とりあえず基本的には、警備担当はエバンが中心で剣術の鍛錬や基礎鍛錬をしつつ、警備のやり方を決めてほしい。給仕担当はアンヌが中心で給仕の練習や、言葉遣い礼儀作法等、貴族向けのお店で必要なことの練習をしてほしい。そして料理人はヨアンが中心でスイーツの研究と、それから完成したスイーツを全員が同じクオリティで作れるようになってほしい。ここまではいいかな?」

「はい。問題ありません」

「じゃあそれが基本で、回復の日は休み、それ以外の日は仕事でよろしくね。それから屋台なんだけど、クレープの屋台の運営をローテーションで任せたいんだ。皆に客商売を学んでもらうって意味も込めてやってもらいたいんだけど、警備担当と給仕、料理人の三人一組でローテーションでやってほしい。アンヌとエバンとヨアンは免除でも良いから、他の皆でローテーションになるかな」


 まあローテーションていうか、これでいくと一日交代になるんだけどね。


「ローテーションて言いつつ一日交代になっちゃうんだけど、もし慣れてきたら二人一組にしても良いよ。クレープは作り方簡単だし、誰でも慣れればできると思う。平民向けだからそこまでのクオリティは求めないし」


 俺がそう言うと、皆は頷いてくれた。


「じゃあ、これから半年ぐらいはそのスケジュールでお願い。たまに進捗を見にくるよ」

「かしこまりました」

「俺の話は以上なんだけど、何か質問がある人はいる?」


 俺はそう聞いて皆を見回したが、誰も質問はなさそうだ。よしっ、じゃあ皆は解散としようかな。そしたらロニーと仕事の話をしないと。


「それじゃあ、これからはロニーと仕事について話すから皆は解散して良いよ。屋台の組とか決めておいてね」


 そうして俺は皆を解散させて、ロニーと二人で話すことにした。とは言っても、皆も食堂でこれからのことについて話し合ってるんだけどね。


「じゃあ、ロニーの仕事について話そうか」

「うん、よろしく」

「まずはロニーの仕事だけど、まあ簡単に言えば全体の調整とお金の管理かな。帳簿をつけたりもお願いしたいんだ」

「お店全般の雑事と管理が僕の仕事だね」

「そうなるね。それでお店が開店するまでなんだけど、その間は屋台の管理と研究で使う材料の管理、それから皆の教育状況の管理などをやってほしいんだ。ロニーは学生だから大変だと思うけど、開店する前の練習も兼ねてって事で……いいかな?」


 王立学校に通いながらは大変だと思うけど、それでも今慣れておいた方が後々楽だと思うんだ。


「もちろん! 僕もお店が開く前に練習したいし、お店のことはちゃんと知っておきたいからね」

「そう言ってもらえて良かった、ありがとう。そうだ、あと皆への給金もロニーの管理として良い? ロニーへの給金は俺の管理とするつもりなんだけど……」

「確かに僕は店長だからね、給金の管理もやるよ」

「じゃあそれもよろしくね。最初は一緒にやろうか」

「そうだね、それが良いかも」


 ロニーは本当に頼りになる。多分ロニーがいなかったら、俺はかなり不安だったと思う。ロニーがいるだけでなんとか上手くやっていけそうって気がするんだよね……

 でもまあ、頼りきりはダメだから俺も頑張らないと。


「じゃあ、ロニーの仕事はとりあえずそんな感じかな」

「わかった。じゃあ話を変えるけど、お金の話をしても良い? 約束だったでしょ?」


 そうだった。ロニーと今まで掛かった金額についての話をして、さらに経費と売り上げの予測を立てようって言われてたんだ。俺の資産のことも話す約束だったな。


「お店の売り上げ予測とどれほどの経費がかかるのか、それから今までにかかった金額を教えてくれる? あと出来れば、レオンの資産も」

「うん、ちゃんと話すよ。それを知らないとロニーの仕事は出来ないからね。まず何から知りたい?」

「うーん、じゃあレオンの資産から。それを知らないで掛かった金額とか聞いたら、倒れそう……」


 ロニーは苦笑しながらそう言った。


「わかった。じゃあ資産からね」

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