第12話 魔法の練習
教会から帰ってきて、マリーは隣のおじさんのところに遊びに行き、父さんと母さんは夜ご飯の仕込みをしている。
豪華なご飯にしてくれるって言ってたから楽しみだ!
俺は早速魔法の練習をしようと思い、リビングに来た。
まずはライトの復習からだよな。教えてもらったように指先に光をつけるイメージで……
『ライト』
指先に俺がイメージした通りの光がついた。これって光の大きさを変えられるんだろうか?
そう思い試してみると、かなり強い光から弱い光、また白い光や黄色い光などイメージ通りになることがわかった。
次は唱えずに魔法を使ってみよう。
指先に光が灯るイメージをして、魔力を指先の方に動かしてみる。するとイメージ通りの光が灯った。
成功だ……! 魔法って凄いな。イメージ通りのことが魔力を使ってできるなんて、どういう原理か全然わからないけどとりあえず凄い!
よしっ! 次はヒールを試してみるか。
でもヒールがしっかりできてるかを試すには、怪我してるところがないとだよなぁ。
痛いのやなんだけど…………でも練習のためだ! そう気合を入れて俺は二階の物置部屋に来た。
そして森に行く時に持っていくナイフを手にし、自分の指先を少し切りつけた。
痛っ! これ治せなかったら最悪だ……そう思いながら俺は、傷が治るイメージをしてヒールと唱えた。
『ヒール』
凄い…………治った! なんか嘘みたいだ。もう傷があった場所すらわからない。
でもライトの魔法よりかなり魔力を使った気がする。治るまでに時間もかかった。
もっと詳細なイメージをしたほうがいいのかな?
確か傷が治るのは、血小板が血を止めてから細胞が修復するとかだったか?
詳しいことはわからないけど、イメージしないよりはマシかもしれない。
そう思ってもう一度指先を切って、今度は俺の知ってる限りのイメージでヒールを使ってみた。
するとさっきの半分ほどの魔力と時間で傷が治った。
凄い! やっぱりイメージが大切なんだな……
もしかして、しっかりとイメージすれば骨折よりも大きな傷も、病気も治せる可能性があるんじゃないか?
でもこれは試しようがないな。そんな大きな怪我はしないに越したことはないから、試す機会がないことを祈ろう。
そう考えながら、俺はリビングに戻った。
次はピュリフィケイションだ。これは汚れを綺麗にするんだよな。
俺は部屋に置いてあった木箱に、埃が積もっているのを綺麗にしようと、ピュリフィケイションを使った。
『ピュリフィケイション』
すると少し光ったら、まるで新品のように木箱が綺麗になっている。
これは凄い! めちゃくちゃ便利じゃないか?
もしかして体にも使える……?
そう思いつきすぐに使ってみたら、自分の体にも使えた。この世界に来て水で洗うだけでスッキリしなかった髪が、凄くさっぱりだ!
これは毎日しよう。俺の服とかベッドも綺麗にしよう。
俺が異世界に来て悩んでいた色々がとりあえずの解決だ!
俺はテンションが上がり、まずはこの部屋を全部綺麗にしようと思い、部屋全体にピュリフィケイションを使おうとした。
そしてそのまま目の前が暗くなり意識を失った。
「うぅ〜ん、ん?? あれ、俺なんでこんなとこで寝てたんだ?」
俺はリビングの机に突っ伏して寝ていた。
たしか魔力の練習をしてて……それでどうしたんだっけ?
そうだ! ピュリフィケイションをこの部屋に使おうとしたら急に目の前が真っ暗になったんだ。
俺は少しの間意識を失ってたんだろう……
原因は多分魔力の使いすぎだな。今はほとんど魔力が感じられない。
少しずつ回復してはいるけど、全回復にはまだまだ時間がかかりそうだな。
魔力は一気に使いすぎると気を失うってことか……気をつけないとだな。
それにピュリフィケイションは、ヒールと比べても何倍も魔力消費量が多かった。
多分、俺が詳細なイメージができないからなんだろう。ヒールは体の組織のことを考えると消費魔力が抑えられる。
しかし、ピュリフィケイションはそういうイメージができていない。
なぜなら、日本では汚れが突然消えて綺麗になるなんて現象あり得なかったからだ。
これはピュリフィケイションは自分にたまに使うくらいがいいんだろうなぁ。せっかく悩みが解決すると思ったのに。
もうあの臭くて汚いトイレやベタベタで気持ち悪い髪の毛とおさらばできると思ったのに……
まあしょうがないか。念願の回復魔法だったし、魔力量は五だしこれで文句を言ってたらバチが当たりそうだ。
そういえば…………俺は最初に回復魔法が使えてしまったから他の属性を試さなかったけど、他の属性を使おうとするとどうなるんだろう?
ちょっと試してみよう。俺は以前母さんが使っていた火魔法を試してみることにした。
人差し指を立てて、その先に火が灯るイメージで……
『火種』
俺がそう唱えたら指先に火が灯った。
「うわっ!!」
俺は何も起きないと思っていたからすごく驚き、思わず椅子から立ち上がってしまった。
えっと…………どういうことだ?
確か一人一属性しか使えないんだよな? もしかして他の属性も使えるとか……?
俺は中庭に移動して、とりあえず水魔法を試してみることにした。
魔法名もわからないので、とりあえずイメージして魔力を使ってみる。
井戸の桶の前に立ち、その桶が水で満たされるイメージをして魔力を消費すると、一瞬で桶の中が水で満たされた。
やっぱり……そのあと風魔法、土魔法、身体強化魔法も試してみたが、すべて問題なく使うことができた。
えっと…………これはもしかして俺が転生者だからとか……? というかそれしか考えられないよな。
うわぁーー! また隠さないといけないことが増えたよ。いや、これって隠さなくてもいいのか??
でも、もし知られたら確実に偉い人に目をつけられるよなぁ。
実験台とかにされたら……ダメだ! 絶対に知られない方がいい! せめて偉い人の後ろ盾があるとか、自分が偉い人になれたとかそういう時以外は内緒にしよう。
でも一人で抱えてるのも辛いよなぁ。
マルセルさんになら話してもいいかな……? なんかあの人なら大丈夫な気がするな。俺の勘だけど……
次に会った時に考えるか。
とりあえず隠し事は増えたけど、自分の身を守るという点と便利さではラッキーだよな。
他の属性も練習しよう。
まずは火魔法からだな! ここでは派手な魔法はできないから、とりあえずファイアーボールを飛ばさないで空中に作ってみるか。
やっぱり火魔法と言えばファイアーボールだよな! 憧れだ!
俺はファイアーボールが俺の前に浮かぶようにイメージをして魔力を使った。
するとイメージ通りのものができた! 凄い!!
もっと効率を良くするには、イメージだよな。火は酸素を消費して燃えるから、それをイメージすればいいのか?
そう思って次はそのイメージでやってみると、さっきの五分の一ほどの魔力で同じ大きさのファイアーボールが作り出せた。
やっぱりイメージの力ってすごいな……
俺は水魔法でウォーターボール、これは空気中の水蒸気をイメージした。
風魔法でウインド、ただ風を起こす魔法だがこれは見えない空気をイメージした。
土魔法でロック、ただ石を作り出す魔法だがこれは石を浮かべる時は無重力、作り出すときは土の圧縮をイメージした。
身体強化魔法でブースト、ただ足が速くなる魔法だが筋肉量がアップする様子をイメージした。
これら四つの魔法は全てイメージすることで、消費魔力を減らすことができた。
魔法名は適当につけただけだ。特にいらないが、あった方がカッコいいからな。
もっと色々できそうだったが、ここでは試せないから、今度森にでも一人で行って試そうと思う。
とにかく俺はどの属性の魔法も使えるようだ……
これからトラブルに巻き込まれそうだけど、まあ良かったと思おう。とりあえず今は。
魔法具のために魔法を試してみるのも全部俺一人でできるしな。
そうだ! 氷が作れるか試してみよう!
俺は、零度以下の少しでも刺激があれば凍る水を、頭の中でイメージした。
えっと確か水は、水分子が動いてて氷は水分子が動かないんだったけ……?
もっと勉強しとくべきだったよなぁ。とりあえず俺が知ってる限りのイメージを思い浮かべて、井戸の桶の中を水で満たした。
見た目は普通に水だが…………すぐに刺激を与えないといけないんだよな。
俺は桶を持って横に振った。すると中の水がバキバキッと一瞬にして凍りついた。
凄い…………できた!! これで冷蔵庫作れるんじゃないか!?
俺はテンションが上がり、もっと練習しようとしたところで、リビングから母さんの声が聞こえた。
「レオンー! 夜ご飯よ」
「はーい! 母さん今行くよ!」
氷が見つかったらまずいと思い、桶を井戸の中に入れて隠し、リビングに戻った。
「母さんお待たせ」
リビングに行くとマリーと父さんももう座っていた。
「レオン何してたの?」
「魔法の練習だよ! ヒールも使えるようになったよ!」
「あら、凄いじゃない! じゃあさっきナイフで少し指を切っちゃったんだけど、治してもらえるかしら」
「うん!『ヒール』」
俺が母さんの手を取りそう唱えると、怪我はすぐに治った。
「凄いな……」
「えぇ、こんなにすぐできるなんてね……」
母さんと父さんが驚いている。何にそんなに驚いてるんだろう?
「どうしたの……?」
「え、えっと、普通はもっと傷が治るまでに時間もかかるし、傷跡も少し残ることが多いのよ。だからレオンの魔法がすごくて驚いちゃって」
「ああ、父さんも驚いたよ。レオンは魔法の才能があるのかもな」
父さんはそう言いながら優しく笑って頭を撫でてくれた。
全ての属性が使えるだけじゃなくて、回復魔法も異常だったなんて……これからは無闇に魔法を使うのはやめよう……
「お兄ちゃん凄いね! 私にもして欲しい!」
「マリーは怪我してないだろう? 怪我はできるだけしないようにして欲しいけど、もし怪我しちゃった時はお兄ちゃんが治すからね」
「うん! お兄ちゃんありがとう!!」
「じゃあご飯食べましょうか」
「「「「いただきます!」」」」
今日のご飯は一人一枚のステーキだった。いつもの夜ご飯だったら考えられない豪華さだ。
「父さん母さんありがとう! すごく美味しい!」
俺がそういうと、優しく微笑んでくれた。
幸せだな、俺の不思議な力で絶対に家族のみんなは守る! そう誓った。
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