27:わからない気持ち(ライル視点)
その日はセリィナ様の様子がおかしかった。
いつもとは少し違う雰囲気でやって来たと思ったらなんだか顔は真っ赤になって表情も強張っているし、右手と右足が同時に前に出すなんて器用な動きをしている。体調でも悪いのだろうか?と思ったがなにか言いたい事があるようなので様子を見ることにした。
そしたら舌を噛んで座り込んじゃうし、もしかして強く噛んでしまったのではと心配になって怪我をしてないから確認しようとしたら……
「ひにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、よくわからないけどなんとも可愛い叫び声をあげながらセリィナ様が走り去ってしまったのだ。
もしかしてだけど……今、避けられたのかしら?(叫び声は可愛かったけど)
最近の変化と言えば夜中にベッドに潜り込まなくなったくらいだったはずだ。まぁ、それは例の悪夢を見なくなったからだとしても……。
いつもなら特別に用事がなくてもまるでヒヨコのようにアタシの後をつきてきていたあのセリィナ様が。
膝の上に乗せて甘やかしても恥ずかしがりはするが嫌がりはしなかったあのセリィナ様が。
なにか心配事があれば真っ先にアタシの元へ来て相談してくれていたし、髪を撫でて抱き上げれば頬擦りをしてきて抱きついたまま眠ることだってあったセリィナ様が。
アタシを避けた……?こんなの初めてじゃないかしら。
ヤバい、めちゃくちゃショックかもだわ。
「おやおや、どうしたんですかライル。まるで今までベッタリだったセリィナお嬢様に突然避けられてしまってショックを受けているような顔をして」
「ロナウドさん……悔しいけど、まさにその通りよ」
なにやらニマニマと笑いを堪えた顔をしながらロナウドさんがやって来た。まさにセリィナ様に逃げられた所を目撃されたようだ。
「なにか嫌われるようなことしたかしら?」
「気になるならセリィナお嬢様に聞いてみればいいじゃないですか。おっと、顔を見たら逃げられるんだから聞きたくても聞けないですなぁ」
ロナウドさんはなぜこんなに楽しそうなのかしら……。
「ロナウドさん。もしかしてこの間、セリィナ様がアタシの膝から離れなかった事を根に持ってる?」
「別に」
つんと真顔になってそっぽを向かれる。これはだいぶ根深い気がするわ。ロナウドさんってば、セリィナ様のこととなるとすぐこうなるんだから困るわ。
するとロナウドさんの背後にいつの間にか人影が現れなにやら耳打ちをしてさっと消えてしまった。あれって公爵家の密偵に使ってる影よね?
「セリィナお嬢様なら、さっきの叫び声をお聞きになったローゼマイン様とマリーローズ様が瞬時に駆けつけて保護なされたようですよ」
「そう。それなら安し「と言うわけで」へ?」
にっこりと笑顔になったが目が笑ってないロナウドさんにガシッと肩を捕まれる。
「セリィナお嬢様になにをしたのか、じっくり聞かせてもらいましょうか?」
「……はぁい」
こうしてアタシはお説教部屋に連行されることになってしまった。ロナウドさんのお説教長いのよね……。
それにしても、セリィナ様どうしたのかしら?
「そんなに落ち込まなくても、セリィナお嬢様もいつまでもライルにひっついて歩くヒヨコではいられないと言うことでしょう」
「……そうですね」
ロナウドさんの諭したような言葉が、少しだけ胸に刺さった気がした。
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