26:悪役令嬢と悪足掻き
悪役令嬢として足掻いて見せる。
と決意したものの、それってどうすればいいのかと頭を悩ませた。
あの断罪劇でミシェル王子が謹慎をくらっているがそれでも学園の入学式は迫ってきている。
学園に入学してしまったら、王子はいなくてもまだ他の攻略対象者がいる。なぜか私に婚約の申し込みをしてきたみたいだが、もしかしたらそれも罠でヒロインを窮地に追いやった罪としてすぐに殺そうとしているのかもしれないと思った。
ライルが攻略対象者だとわかった以上、ライル以外の人間の手にかかるのは嫌だった。かといって今すぐ殺されたいわけではない。あくまでも悪役令嬢にとってのバッドエンドの場合だ。
だって、出来ることならばライルをヒロインになんか渡したくないのだから。
「悪役令嬢らしくかぁ……」
悪役令嬢と言えばヒロイン虐めが定番のようだが、わざわざヒロインに会いに行くつもりはない。私の願いはひとつだけなのだ。
私はライルが好き。
つまりそれは、ライルのことを異性として好きなわけで……。
ライルをヒロインに渡したくない。ずっと側にいてほしい。……ならば、ライルに私の事を好きになってもらわなくちゃいけないのだ。
そうよ、やっぱり……ライルに告白するのよ!
古今東西悪役令嬢と言えば、妖艶な色気があってなんていうか男を籠絡するイメージだもの!お色気たっぷりで「私のものになりなさい」とライルに迫ってみたらいいんじゃなかろうか?!そしてライルが私にメロメロになってくれれば解決だ!
そうと決まれば実戦あるのみ!と、意気込んだのは良かったのだが……。
「ラ、ララララララララ、ライル!」
「あら、セリィナ様。どうしたの?そんなに慌てて……。ふふっ、寝癖がついてるわよ?」
そう言ってふわりと笑ったライルが私の髪をきれいな指先ですいた。
「!」
ライルの指が私の髪に触れてると思ったら一気に体温が上昇する。ライルに頭を撫でられたり髪を整えてもらうのなんかいつものことなのに心臓が爆発しそうになった。
ね、寝癖?寝癖ってなんだっけ?あぁ、もう頭がぐるぐるしちゃってよくわからなくなってきた。とにかく、目的を果たさなくちゃ!
「あ、あの、わ、私!ライルに、そのっ……!」
落ち着くのよ、セリィナ!あなたは悪役令嬢なんだから、悪役令嬢らしく堂々とお色気たっぷりでライルを籠絡するのよ!
「私、ライルがだいじゅっひたぁっ!」
ーーーーうっ、舌を噛んだぁ!
恥ずかしさと混乱と舌の痛みで思わず膝をつくと、ライルが心配そうに顔を覗き込んできた。
「セリィナ様、舌を噛んだの?ちょっと見せてちょうだい」
そして顎に手を添えられ、あーんと口を開かされて舌先を見られた瞬間。私は限界を迎えた。
「ひにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と叫びながら、ライルの前から逃げ出したのだった。
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