ニューワールド【惑星/脳/無職】

ハローワークで渡されたヘッドギアを付けてベッドに寝転がる。

接続されました。の音声と共に僕の脳はどこかの誰かに明け渡される。

今では無職なんて人は存在しない。

職業を失った人間に課される義務は、1日5時間までの強制的な労働。

労働と言ってもベッドで寝てるだけでOK。

政府の巨大なクラウドに脳を接続して、コンピュータ代わりに演算を行うのだとか。

一瞬で5時間が経っている。ほぼほぼ眠っているのと変わらないので爽快ですらある。

これできちんと給料が貰えるんだから文句なしだ。


人間の脳にしかできない演算は、例えて言えば、パズルの組み立て作業。

大規模コンピュータではシンプルな法則の計算。

量子コンピュータで確率論の検証。

脳は情報の統合と構築。

僕たちの脳味噌はどこかの仮想空間でひたすら積み木をさせられているのだ。



いつもの通りヘッドギアをつけたある日、通信が繋がらない。

ハローワークへ問い合わせると、ニュースを見ろとのことだった。動画サイトを開く。


会見をする政府の偉い人が曰く。

これまで秘密裏に進められてきたニューワールド計画が完了した。

仮想時空内で組み立てられた理想の惑星、ニューワールドを現世に具体化させ、この地球と"すげ替える"。

その惑星は、ヘブンとか、ジョウドと呼ばれるものに近いだろう。

以上。


その言葉が終わると同時に、大きな揺れに立っていられなくなる。

すげ替えが早くも始まったのだ。

やがて揺れが収まる。

動画サイトは、世界のシフトが成功、我々はニューワールドに辿り着いたと伝えている。



かくして新たな世界に生きることになった僕たちは、ニューワールドで穏やかに暮らしている。

豊かな資源。気候ごとの穏やかな生活。便利なインターネット。進んだ科学技術。全ての人々の信念の自由。信念を守るために戦争をする自由。

僕たちの選んだ理想郷がここなのだ。


ハローワークからの電話がなる。

次の仕事。

ニュー・ニューワールドの発掘が開始されるのだそうだ。

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