古いSF映画【兵器/激怒/映画化】
クソゴミカス。
僕は激怒しながらシアターを出る。横のサクラはどうでもよさそうな顔で前を見ている。
僕がこよなく愛する、古いSFノベルの待望の映画化だったのだが。
ヒロインの男の娘が、ただの女に改変されていた。
こんなことが許されるだろうか。
やっぱり実写化に期待するべきじゃなかった。
広く楽しめるようにとか適当なことを言って物語の重要な部分を改悪して何が楽しいのか?
「サクラはどう思う?」
「いや、別によく出来てたと思うけど。ほぼ未来予知ですよ」
あらすじは単純。
環境汚染された近未来(当時からして)で、アンドロイドの犯罪を憎む主人公が、実は自分もアンドロイド、というオチ。
アンドロイドが身近じゃなかった時代にはよくあった話。
そして現在、確かにこのストーリーはほぼ現実となっている。
某国と某国の戦争の果てに切り札として投入された化学兵器によって、地球はおよそ地上に人間が住める惑星ではなくなった。
人間たちは地下の都市でフルフェイスのマスクをしながら生活している。
そして僕たちアンドロイドは以前通りに地上で暮らしている。平和なものだ。
僕たちを動かす人工知能はもはや人間の頭脳と変わりはなく、感情はもちろん、クオリアまで存在する。
しかし今回の件で僕は疑問に思う。
やはりアンドロイドでは、繊細な人間の感性を再現しきれていないんじゃないか。
でなきゃ、こんな馬鹿みたいな改悪はありえない!!
※※※
ハルカとは生産ラインが同じで、学習に使ったソフトも同じ。
まぁ、人間で言ったら幼馴染ってやつだろうか。
私はハルカのことがずっと好きで色々アプローチをしてるのだけど、アイツには一向に響かない。
恋愛の回路が焼き切れてるのかと心配になる。
今日だって、ハルカが好きだっていう話が映画になるっていうので、私が誘ったのだ。
それなのにコイツは普通に映画を見て私に感想をぶつけてくる。ただそれだけ。
「・・・と、繊細な感情を理解する僕は思うワケ」
映画を観た後、喫茶店でハルカが言う。
「そうかもね」
私は呆れてモノも言えない。
私たちの人工知能が感情を人間レベルで獲得してるのは間違いない。
ただ、相手のそれを汲めるかどうかは、そのアンドロイド次第。それも人間と変わらない。
こういうのを何て言うのか思い出した。
鈍感主人公。
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