夢オチ【夢/シャツ/勇者】

先に言っておくけれどこの話は夢オチだ。

毎日連続した夢を見ている。

英語の授業中にはどうしても睡魔に襲われる。


世界観としてはドラゴンクエスト。

ただし登場人物は全員、クラスメイトたち。

僕は勇者として魔王を倒せと王様から告げられる。王様は校長先生。

酒場で仲間になるのはクラスの陰キャ仲間たち。

戦士と僧侶と魔法使い。全員魔法使いみたいな貧相な顔つきだけど。


夢を見始めてから数ヶ月。

僕たちの旅は僕たちの現実とは対照的に順調に続いていた。

いよいよラスボス、魔王の城へと辿り着く。

魔王の正体はクラスのボス、ハシモトくん。

ハシモトくんは僕たちのグループをターゲットにお金を巻き上げる悪いクラスメイトだ。

僕たちメンバーは全員、クラスの女子の写真を前に自慰をする動画を撮影されている。


ただここは僕の夢の世界。

僕たちの鍛え上げられた剣と魔法は、苦戦しながらもハシモトくんを倒した。

こうして世界に平和が訪れた。

と思われた。


魔王を倒した僕たちを歓迎する民衆が次々と燃え上がり、死んでいく。

魔王は大魔王の手下に過ぎなかったのだ。

僕の夢はもうしばらく続くことになった。


大魔王は自分の親のコネクションを使って、ハシモトくんをはじめ、他校の不良たちまでも配下に置いているのだそうだ。

これは隣のクラスのヤマシタくんから聞いた話。

いや、ヤマシタくんの顔をした夢の中の登場人物?分からない。


やがて僕たちはついに大魔王の城へと辿り着く。

大魔王のいるラストフロアはなんと、僕のクラスの教室だった。

クラスメイトたちはそれぞれ、ファンタジーな世界観の服装で席に座っている。


そして、大魔王の正体は、これまでストーリーに登場しなかった唯一のクラスメイト。タキグチくんだ。

タキグチくんはクラス内では決して目立たないものの、常に学年トップの秀才。

しかしその実は、裏でこの地区の高校生たちを牛耳り、お金を集めていたのだ。


ラストバトル。

僕の手には家から持ってきた包丁が握られている。

大魔王にそれを突き刺すと、あっけなく倒れ込んでしまった。


ぬるりとした感触に手元を見ると、僕の両手と、僕の制服のシャツがべったりと血で濡れていた。

クラスメイトたちの叫び声で僕は目を覚ます。

目の前には、呻き声をあげるタキグチくん。


そんな夢だった。

そして僕は、夢を成し遂げた。

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