ミュンヒハウゼン・アンバー【液/不完全/王子】
B国の王子が死んで10年になるが、その身体は王宮の地下深くに保存されているという。
なんでも王子は悪い魔女に毒のりんごを食べさせられて死んだのだとか。
それを悲しんだ女王は魔術師を呼んだ。
硝子の棺に王子の遺体、そこへ魔術のかかった樹液を充すことで、美しい王子の時を止めようと考えたのだ。
かくして薄命の王子は今も美しさを保ちながら長い眠りについている。
B国に攻め込んだのは隣国A国の若き騎士王アリアである。
指導者のいないB国にはなすすべが無かった。
騎士王が地下へ踏み込むとそこには美しい王子の宝石。
その横にはしわくちゃの魔女。
「この子は渡さない!」
王子に縋りつく魔女。
騎士王は気付く、この魔女はB国の女王だ。
10年以上前、騎士王と王子の縁談があったのだが、この女王の反対(あと騎士王もめっちゃ我が強かったので)破談となったのだ。
顛末としては。
美しい王子が外へ行ってしまうことに耐えられなくなった女王は自らの手で王子に毒のりんごを与え、王子を美しいままに、自らの手から逃れられないようにしたのだった。
「この子は今が完成しているの!これからこの子が老いていくなんてあってはいけない!私が完璧に育て上げたのだから!」
「下らない」
騎士王が剣の一閃で硝子の棺と固まった樹液を切り捨てる。
崩れ落ちる女王。
そして騎士王のキスで王子は目を覚ます。
王子を連れて騎士王は女王に告げる。
「さようなら、完璧なお母様」
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