イン・インソムニア【深夜の会議室/雀/寝る】
「このチュンチュン言ってるのはつまり、男女がセックスをしたあとに朝を迎えているというメタファーなんだよ!」
むかーしのコミックを手にマークが興奮した様子で詰め寄ってくる。
マーク曰く、やはりこうした婉曲表現はリアルな身体の経験がないと描けないとかなんとか。
マークはちょっと"現実主義(リアリスト)"なとこがある。
果たして人類が仮想現実世界、通称"深夜の会議室"を中心とした暮らしに移り変わって大分経つ。
開発者達は昼は開発、夜はプロトタイプを使い仮想現実世界にダイブ、身体は眠らせたままそこで会議を続けてたのだとか。
今となっては深夜どころか真っ昼間でも現実世界にいる人間の方が少ない。
"クサビ"か"リアリスト"の2択。
クサビは現実と人々を繋ぐ人。要は"生身"のケアをしてくれる人。正確にはケアをしてくれる人工知能をケアしてくれる人。
リアリストは文字通り、現実の生活とかいうのに憧れちゃってる人。夢見ちゃってる系。
「そこまで言うかね」
だって"体験"が再現されてるところの中にいるんだから"体験"してるのと同じ。哲学的。
でも確かに、俺たちは起きたことがない。
会議室では眠る必要なんて無いし、生身的な睡眠はイコール会議室の中への移動。
以前"寝起き"のアドオンは試してみたけど体調悪くなっただけでしたけど。
世界観説明ここまで。
過去のコミックにやたら描かれている以上、"寝起き"には何か特別なものがあるのかもしれないと調べ出す。
たまたま会議室へきていたリアリストと出会い、会議室が唯一再現できないものがあり、それが"睡眠"であると教えられる。
そして太陽の元目覚める素晴らしさも。
"寝起き"を知るには睡眠が必要だ。
本当に会議室では眠れないのか?と主人公が試してみると、主人公は停止してしまったまま戻ってこなくなってしまう。
リアリストがマークに言う。
会議室の中で睡眠するということは、データを停止するということ。データは一度止まってしまうともう動き出せない。
会議室での睡眠は死を意味するのだった。
しかし主人公は死んでいなかった。
そして睡眠することもできなかった。
会議室での睡眠は更なる深層へのダイブ。
通りがかった男が言う。
「俺たちはもう、眠れないんだよ」
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