信じるべきはあなたの中に【島/来世/破壊】

 もう全部破壊したい、ってかぶっ壊しちゃいたい、そんな衝動に駆られることってあるでしょう?

 思考を停止した人間はみんな面白いくらい一様に平板な表情をするようになる。そこに薄っぺらい笑顔を張り付けて仲間内だけで通じるような話をして笑い合う。

 排他的と書いてアットホームと読ませるような糞食らえなコミュニティに、乗り切れなかった人たちは石を投げられて追い出される。

 バカバカしい優越感に浸っている人たちが、目覚めてない人たちは可哀想っていうけど、私に言わせれば本当に目が開いていないのはあんたたちだって。崖っぷちだと思っているけど、本当は崖の下にいるって誰の言葉だったっけ? まさに本当、そんな感じの人たちの中で、崖の下にいるって気づいた人も、もう元の生活に戻ることはできないから、狂乱の熱狂の中、目と耳を塞いで必死にそのコミュニティで話を合わせようとする。最低だ。

 そんな愚者の天国、賢者の地獄で『覚醒せよ』なんて書かれたプラカードを持って街頭に立っている、あなたたちの方が早く悪い夢から目覚めた方がいいんだ。

 そんな率直な感想を本部に伝えたら、あなたにこの宗派を理解するのは無理だったかしらと、ママが笑顔で私に言う。

「大丈夫、真夜も来世ではきちんとできるから」

 そっと私の耳元で囁くママにゾッとする。

 来世に期待しろって? ふざけないでよ。

 彼らはとうとう自分たちだけのコミュニティだけが生活する島への移住を決めた。

 私がそれを止めなければいけない。教祖のママを止めないといけない。

 だから私は教団が島へ移住して自給自足が安定するまでの間に食べる予定の教団のオートミールの麻袋全てに殺鼠剤を仕込んだ。教義で食べられるものはこれしかなかったから。

 もしかしたら、このまま私も死んでしまうかもしれない。

 だけど、ママが、今度生まれてきた私を抱きとめてくれるなら、怖いけどなんでもなかった。船に揺られて教団の人と島へ向かう破滅への道中、私は晴れやかだった。

 ねぇ神様、ママを返してよ。それだけでいいからさ。

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