≪後日談—女、独り言を呟く—≫

「いやー!ほんっと、この前は楽しかったなぁ♪」


 そこは、とある辺境にある村の家の一室。レヴィアタンは一人だった。そこは彼女が人として生活を送るための拠点の一つ。

 アダムはといえば、スバルとアダムが戦ったあの日。その時に受けた傷が思った以上に酷く現在魔力と身体の回復に努めているのである。

 あと少し彼女の到着が遅れていればまず間違いなくアダムは消し炭になっていたことであろう。

 そんなわけで、一人でいることが増えた彼女のここ最近の日課になりつつあるのは「あの日」を思い出すことなのであった。


「アダムがあそこまでになっちゃったのは予想外だし、ソフィアも殺せなかったけど、なんたって僕あんな素敵な友達が出来ちゃったしねぇー!」


 キャー!何て言いながら足をバタつかせる彼女は、どこからどう見てもアリサと何ら変わらない花の乙女にしかみえない。

 もっとも、彼女も彼女で生まれてから眠りについていた時間を計算に含めないのであればアリサとなんら年齢は変わらないというのもあるがとにかく彼女は浮かれまくっていた。


「ふふふっ、アリサ僕を殺すってさ~♪僕を殺したいのか~、そっか~、僕殺されちゃうのか~。ふふふふふっ」


 彼女にとって、命の簒奪は何よりも深い愛情表現の形だった。

 先代魔王がその愛ゆえに先代勇者を殺したように、彼女自信もまた最も愛しいものを殺し、最も愛しいものに殺されることを望んでいる。

 ゆえに彼女はソフィアをアダムに殺すように頼んだ。この世で最も忌み嫌う女をこの手にかけるのだけは彼女の心情が許さない。


「それに僕個人の目的も果たせたし万々歳って感じだよね~。まぁスバル君がどんどんただの魔力タンクじゃなくなりつつあるのは嬉しくないけどぉ~!」


 そんな彼女には、ある目的があった。

 それは鍵——。ソフィアによって封印された三体の魔物の封印を解く鍵。それの隠し場所がたまたま王宮の地下だったのである。

 しかし、その事を知っているのは先代魔王と彼女だけ。


「あぁー、でもやだなぁー。あの三匹叩き起こすのだって別に簡単じゃないしなぁー」


 彼女自身は元々それをアダムにさせるつもりだったが今はそれが出来ない。


「まぁ何とかしようか♪」


 彼女はこれで相当なしたがりさんなのであった。

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