第52話 本当のお姉ちゃん①

ボクは改めて自分の能力について調べてみた。



『魅了』


・効果

相手が術者に好意を抱く

好意の種類は相手によって変わる


・発動条件

術者の顔を見る(写真、映像は不可)


・効果時間 24時間


・解除条件

①最後に術者の顔を見てから24時間が経過

②術者が能力の交換、譲渡をする

③術者が死亡する



やっぱりそうだ。

お姉ちゃんはボクのことが好きなわけじゃなく、能力のせいでそう思わされてるだけなんだ。

今のお姉ちゃんは、本当のお姉ちゃんじゃないんだ……。


お姉ちゃんが正気に戻ったら、ボクのことをどう思うだろう?

気持ち悪い、よね…。


こんなの間違ってる。

でも、この能力は自分の意思で解除できないし、タッグバトル開始時刻までもう24時間を切ってるから、パートナーとして離れるわけにもいかない。


「ねえ、お姉ちゃんと一緒にお風呂入ろっか?」


こっちの気も知らずに、恥ずかしいことを平気で言う。


「ま、待って! さすがに、お風呂はちょっと……」


「お姉ちゃんとお風呂入るのは嫌?」


「嫌ではないけど、その前に聞いて」


「なあに?」


「お姉ちゃんは、自分が魅了にかかってるの知ってる?」


「もちろん知ってるよ。あなたのステータスはちゃんと確認したからね」


「知ってるのに、おかしいと思わないの?」


「思わないよ。仮に魅了にかかってなかったとしても、私があなたのことを好きって気持ちは少しも変わらないからね」


だ、だめだ。

完全に正気を失ってる。


「じゃあ、試しにボクとお姉ちゃんの能力を交換してみない? そしたら、お姉ちゃんの本当の気持ちが分かると思うから」


「いいよ。その代わり、魅了が解けた状態でも気持ちが変わらなかったら、一緒にお風呂入ってもらうからね」


「うん、分かった」


それなら問題ない。

むしろ嬉しい。

お姉ちゃんとお風呂……

って、想像してる場合じゃない。


「交換したら、今度はボクがお姉ちゃんの魅了にかかっちゃうから、目隠しするね」


「私が結んであげる」


お姉ちゃんが備え付けのタオルを目元に巻き付けてくれる。


「ありがとう。確か、お姉ちゃんは3つの能力を持ってたよね? どれと交換する?」


「一時的な交換だからどれでもいいんだけど、せっかくだから、私の『何でも切れる力』を使ってみる?」


「うん。そうする」


「じゃあ、互いが同意したってことで、交換成立だね」


「うん」


これでお姉ちゃんは元に戻ったはず。

さあ、どうなる?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る