第51話 魅了


お姉ちゃんによると、この知らせが届いたのは、ボクを発見するほんの数時間前だったらしい。


しかも、能力者同士の戦いはそれ以前から行われており、既に何人か死んでいるのだという。


能力者の数はリストにある6人だけでないらしく、何人いるのかも分からない。

途中で増えることもあれば、死んだはずの人間が復活することもある。


そして突然のタッグバトル開催予告。


滅茶苦茶だ。


すべては神の気まぐれであり、優勝すれば神になれるという約束さえ守られる保証はない。


「だからね、私たちは優勝するだけでなく、その先のことも考えなければならないの。場合によっては、神と戦うことも」


「そんなの、どうやって?」


「今はまだ分からない。だから能力者同士で戦うのはやめて、みんなで協力した方がいいって言う人もいる」


「その人は信用できるの?」


「それも分からない。私たちを倒すための罠かもしれない。私が信用できるのは、あなただけ」


お姉ちゃんの手が、またボクを包む。


「あなただけなの」


あたたかくて、柔らかくて、優しい。

天国から地獄に突き落とされるような話をされたというのに、また天にも昇るような気持ちになってくる。


でも、何かがおかしい。


「それは、ボクがパートナーだから?」


「もちろん、それもある。でも、それ以上に、あなたのことが好きだから。あなたのことが大切だから」


やっぱり、どこかおかしい。

いくら弟がほしかったからといって、さっき初めて会ったばかりの人間をここまで好きになる?


ひょっとして、ボクの『能力』というのが関係してる?


「そ、そういえば、ボクの能力ってどういうものなの?」


「ん、それなら、ステータス画面で確認できるよ」


お姉ちゃんがボクのステータス画面を開いて見せてくれる。


魅了みりょう


難しい漢字だ。

フリガナは付いてるけど意味が分からない。


「これはどういう能力なの?」


「これはね、あなたのことを見た人は、みんなあなたのことが好きになっちゃうってこと」


……あ、あれ?

じゃあ、お姉ちゃん、既にボクの能力にかかってない?




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