第42話 時間停止無効能力

ひとまず同盟成立ということで、おばさんは拳銃を降ろしてくれた。


だが、その直後に容赦なく言う。


「まずは身体検査だ。着ている物を全部脱ぎな」


「え、全部……ですか?」


「そうだ。全裸になるんだよ」


「し、しかし、腕が折れてるから服が脱げません」


「しょうがないねえ」


おばさんは、床に突っ伏していた俺を仰向けにし、めんどくさそうな表情で服を脱がし始めた。


ちくしょう、なんでおばさんに脱がされなきゃならないんだよ。これも相手が美少女だったら、ある意味嬉しいシチュエーションだってのに。


時間停止中とはいえ、女の子だらけの教室でおばさんに服脱がされるとか、どういう状況だよ。

怖えよ。普通に怖えよ。


あと脱がし方が乱暴で痛えよ。

怪我してんだから少しは気を使ってくれよ。


躊躇なく最後の一枚まで剥ぎ取ったおばさんは、あざ笑うように言う。


「よし、武器は隠してないようだね。それにしても貧弱な身体だねえ。もっと鍛えなよ」


「は、はあ。まあ怪我が治ったら……」


余計なお世話だよ、この野郎。


それから、俺は保健室に運ばれて怪我の応急処置を受けた。

医師でも看護師でもない素人おばさんの処置だから、かなりテキトーだ。


それでも、痛み止めの薬を飲んで、ベッドに横たわったおかげで、少しは楽になった。


おばさんは空いている隣のベッドにドカッと腰を降ろしてから言う。


「それじゃ、そろそろ情報交換といこうかい。さっきはあんたが世界探偵のことをしゃべってくれたから、今度はあたしだね。何が聞きたい?」


おお、こっちに質問させてくれるのか。

理解があって助かる。

聞きたいことは山ほどあるが、まずは何より能力についてだ。


「え~と、じゃあ、いくつ能力を持ってるんですか?」


「いくつだと思う? 状況から考えて、ある程度は察しがついてるんじゃないのかい?」


質問を質問で返すんじゃねえよ、タコ。

だが、おばさんの言うとおり、ある程度の推察はできている。


「少なくとも、三つは持ってるんじゃないかと」


「どんな能力だと思う?」


だから質問を質問で……!

頭沸いてのか、このゴリラババア。

などと頭の中で悪態をつきつつも、俺は素直に答える。


「まずは、相手の能力を無効化する能力。次に、能力者を探し出す能力。それから、相手の認識を変換するような能力ですか?」


「まあ間違っちゃいないね。そこまで万能な能力ではないんだけどね」


「どういうことですか?」


「あたしが神様からもらった能力は二つ。そのうちの一つが『時間停止無効能力』さ」


なんだそりゃ。


「え、じゃあ、無効化できるのは俺の能力だけってことですか?」


「そうみたいだね。なんでまたこんな限定的な能力を与えたのか知らないけど」


ちくしょう、それじゃあ俺が手に入れても意味がない。

俺に好き勝手させないためだけの能力じゃねえか。


神様の奴、遊んでんのか?

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