第41話 形勢逆転への道②
とっさに出てきたのは、ついさっき世界探偵に投げかけられた疑問だった。
「さて、どうだろうね」
おばさんは曖昧な返事をしつつ、銃口をこちらへ向けてきた。
「動くんじゃないよ」
よし。
いや、よくはないけど。
でも、警告するということは、問答無用で殺すつもりはないということだ。
俺は床に突っ伏したままで言う。
「分かった。抵抗はしないから話を聞いてくれ」
「神様のことかい? そりゃあたしだって半信半疑さ。で、それがどうしたんだい?」
「俺たち全員、神様に騙されてるかもしれないんだぞ? なのに殺し合いをするなんて、馬鹿げてるだろ? だから争うのはやめて、同盟を結ばないかって話さ」
「同盟を結んで、それからどうするんだい?」
「神様をぶっ倒すんだよ」
少しの沈黙の後、おばさんは大笑いした。
「あはははは! あんた、面白いこと言うねえ」
お、これは好感触か?
「で、肝心の神様のぶっ倒し方に当てはあるのかい?」
「ある」
って言うしかないわな。
「ほう、そりゃすごい。是非とも聞かせてほしいもんだね」
当然ながら、あるはずがない。
だが、今はとにかく話を伸ばさなければ。
「俺には分からない。が、知ってそうな奴に心当たりがある」
「なんだそりゃ。で、誰なんだい?」
「あんた、世界探偵って知ってるか?」
「ああ、何ヶ月か前にライブ放送でリッパーに挑戦状を叩きつけた奴だろ? その後どうなったかは知らないけど。なんも進展がないから無能呼ばわりされてたっけな」
「表向きはそうだ。けど、あいつは裏では、かなりのところまで捜査を進めている。能力者二人と同盟を結んで、神様の正体にまで迫ってるんだ」
「へえ。それが本当なら大したもんだけど、どうしてあんたがそんなことを知ってるんだい?」
「世界探偵から俺に電話がかかってきたんだ。その時、色々と情報交換したんだけど、話の流れであいつの居場所が分かっちまったんだ」
「どこにいるんだい?」
「これ以上は、タダでは言えない。俺の命を保証した上で、同盟を結んでくれるなら言う」
「ふ〜ん……」
おばさんは銃口を向けたまま、俺の頭をギュッと踏みつけてきた。
「ぐ……」
「あんた自分の立場分かってんのかい? この状況で対等な同盟が結べると思ってるなら、相当おめでたい頭してるよ」
分かってるさ、それくらい。
ちくしょう、なんでおばさんなんだよ。
美少女の下僕とかだったら、それはそれでおいしい展開だったのに。
こんな屈強なおばさんに頭踏まれて悦ぶ特殊性癖は持ち合わせてねえぞ。
だが今は贅沢を言っている場合ではない。
「もちろん、分かって……ます。俺は下僕でも奴隷でも構いません。だから、命ばかりは取らないでください」
おばさんは、そんな俺を鼻で笑う。
「みっともないねえ。そうまでして生き延びたいのかい?」
当たり前だ。
なんとしても生き残って、神様になりさえすれば、すべてがチャラになる。
屈辱的な記憶など消してしまえばいい。
だから俺は何でもする。
「お願いします……」
「ふん……」
「お願いします!」
「…………」
長い沈黙の後、おばさんは俺の頭から足を離した。
「まあいい。あんたしか知らないこともあるんだろうしね。世界探偵のことも気になる。絶対服従するってんなら、しばらくは生かしといてやるよ」
やった!
バカめ!
俺を生かしておいたこと、絶対に後悔させてやるからな。
このクソババアめ!
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