第40話 形勢逆転への道①


間違いない。

こいつは元透明化能力のおばさんだ。


カウンター能力の男に殺されて能力を奪われたはずなのに蘇ってやがる。

しかも新しい能力を与えられて。


それにしたって、こんな偶然あるか?

たまたま入った女子校の校長が敵能力者だなんて。


なんか能力を使ってるだろ。

俺の時間停止を無効化する能力とは別の能力を。

つまり、こいつは二つ以上の能力を持っている。


「校長先生、早く捕まえてください!」


「任せな!」


女子生徒たちの声に応え、ジャージおばさんはうつ伏せ状態の俺の右腕を取り、逆関節を極める。


うぐぐ、動けねえ。


「こいつは偽警官だよ! すぐに110番通報を」


「はい!」


ふざけんな、お前だって偽物だろうが。

だが、それを言っても女子生徒たちには通じないだろう。


完全にアウェイだ。

これでは時間停止を解除させておく意味がない。


というわけで再び時間停止を発動。

教室内に静寂が戻った。

が、当然のようにおばさんの力は緩まない。


俺は苦し紛れに叫ぶ。


「待て! 待ってくれ! 俺の負けだ。降参する! だから手を離してくれ!」


「ダメだ。お前は拳銃を持っているからね。最低でも右腕は潰させてもらうよ」


「やめーー」


言い切る前に、激痛が俺の意識を支配した。


ブチン、と腱が切れる音がハッキリ聞こえた。

腕が曲がってはならない方に曲がった。


「がああああああああああああ!」


大声を出さずにはいられなかった。


「あああー! ああああー! あああああー!」


何度も何度も、狂ったように声を上げる。

そんなことをしても痛みは収まらないが、とにかく少しでも意識を紛らわせたかった。


「あ……ぁ……」


ついには、過呼吸で声も出なくなる。

血と汗と涙で視界もぼやけてきた。


おばさんは、のたうち回る俺を押さえつけ、腰の拳銃をホルスターごと取り上げた。


ちくしょう、これで終わりなのかよぉ……。


俺が敵の立場なら、ここは確実に息の根を止める。絶対に容赦などしない。

交渉にも応じない。


だが、こいつは俺じゃない。

話の内容によっては、まだ助かる道があるかもしれない。


だから、必死の思いで声を絞り出す。


「あ、あんたは、神様のことを信じてるのか?」


「なに?」


「能力者を全員殺せば神様になれるって話を、信じてるのかって聞いてるんだ」



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