第22話 同盟①


「どうして……?」


『はい?』


「どうして、まだ生きてるの?」


『おっしゃっていることがよく分かりませんね。それより、早くいいこととやらを教えてください』


意味が分からない。

どうして射程マックスでも死なないの?


考えられるのは、防御か回避系の能力?

それとも射程外、地球の外にいる?

そんなバカな。


いや、それより、反撃が来る!?


「あ……!」


私は動揺して携帯電話を床に落とした。

すぐさま拾い上げ、必死に叫ぶ。


「ま、待って! 攻撃しないで!」


『どうか落ち着いてください。いきなり殺したりはしません』


「じゃあ、いずれは殺すってこと?」


『いいえ、できればそれもしたくありません。私は能力者同士で殺し合うべきではないと考えています』


「え……」


意外な言葉に、少しだけ心臓の鼓動が収まる。


『こちらの望みは情報共有です。まずは現在の我々の状況を説明します。その上で、こちらからも質問させていただきたい。どうでしょう?』


何が何だか分からないけど、とりあえず話を聞いた方が良さそうだ。


「……分かった。話して」


私はベッドの上に座り直して、耳を傾ける。


『はじめに、私は能力者ではありません。先ほどの発言はハッタリです』


こいつぬけぬけと……。


『ですが、全くの嘘というわけでもありません。私自身は能力を持たない人間ですが、ここには私と同盟を結んだ二人の能力者がいます』


一般人と能力者が、同盟……?


『一人は瞬間移動の能力者。もう一人は超長距離射撃の能力者です』


よりによって上位能力者の二人か。


『お二人とも、自己紹介をお願いします』


世界探偵がそういった次の瞬間、突然、背後から肩をつかまれた。


「やっほー」


「ひっ…!」


慌てて振り返ると、ベッドの上で中学生くらいの女の子が膝立ちしている。


「おっと攻撃しないでね。あたしが瞬間移動の能力者だよ」


ステータス画面の能力者一覧に載っているから顔は知っていた。間違いない。


女の子が私の顔をまじまじと見つめてくる。


「な、なに?」


「いや、二代目リッパーがこんな綺麗なお姉さんだったなんて意外だなぁって」


私はフッと笑みをこぼす。


「もっと凶悪な顔してると思った?」


「そりゃそうだよ。だって、人類史上最強最大の殺戮者だよ」


こいつもずけずけと……。


「じゃあ、あたし一旦あっちに戻るね。あたしがいないと電波が送れないから」


「待って。あなたたち、いったいどこにいるの?」


「ん、月だよ」


「は?」


「だから月だって。英語で言うとムーン。正確には、月に着陸したスペースシャトルの中だけどね」


地球から月までの距離は約38万km。

13000kmの射程では届くはずがない。


いったい何なの、こいつら?



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