第19話 新たな能力


まずいな…。

あまく見てた。


能力者に攻撃されなければ発動しないカウンター能力は、当然ながら下位能力。

最弱だった私ほどじゃないにしても、この男も情報をたくさんもらっている。


この男と透明化能力の組み合わせは最悪だ。これじゃあ、いつ殺されてもおかしくない。

まさか、もうここに……。


私は席から立ち、周囲を見回す。

乗客たちの視線が突き刺さる。


落ち着け私。

いくらなんでも、ちょうどこの新幹線に乗ってるなんてありえない。


腰を下ろし、窓の外を見る。

住宅やビルが増えてきた。

もうじき首都圏に入る。


終点駅で待ち伏せされている可能性も考えて次の駅で降りよう。

そこだって首都に次ぐくらいの大都会だ。経験値は充分稼げる。


とりあえず首都圏一帯が殺傷範囲に収まるまで射程を伸ばしましょう。

地図を見た感じだと150㎞くらいまで伸ばせばだいたい収まる。


まずは引き続き要介護高齢者を減らす。それで足りなければ、犯罪者でもヤクザでも政治家でも、社会悪を次々と消してやる。


新幹線が首都圏に入った。

再び能力を発動。


昨日ちまちまと経験値集めしたのが馬鹿らしくなるくらい爆発的に数字が伸びていく。


さすが首都圏ともなると人口密度が違う。目的の駅を降りるまでに射程は50kmを超えていた。

これだけの射程があれば、もう首都にいかなくとも首都に届く。


思ったより順調だ。

要介護者だけでこれほど伸びるとは……。

そんなに多いってこと?


今更ながら調べてみると、この国の要介護者は670万人もいるようだ。そのうち私が減らしたのは5万人程度。

まだまだこの国の負担は重い。


まあ、そういうことなら遠慮なくやらせてもらいましょう。


私は駅から出た後、タクシーに乗り、ついさっき予約したホテルにチェックインする。


ベッドに倒れ込んでちょっと休憩。

5万人も葬った割には心は穏やかだった。


街中の様子も普段とそう変わらなかった。パトカーや救急車のサイレンが少しうるさかったくらいか。


まだまだ神へと至る道は序盤なのだ。


そこでふと思い出した。

そうだ、運良くこの辺りに能力者がいれば新しい能力が手に入るかもしれない。


私はダメ元で、カウンター男以外の能力者を切り刻むよう心の中で唱えてみる。


直後、

『レベルアップ!』


え、当たった!?


『射程・51892m⇨51893m』

『宇宙空間適応能力を入手』


は?

なにこの能力?


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